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すぐに実践できる「感謝の瞑想」で、気持ちを穏やかに

2021.11.15

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精神科医の禅僧が贈る「幸せ力を高めるマインドフルネス」第11回(後編) 「自利」とは自分に優しさを向け、自分を大切にする心。それがあれば、他者の幸せを願う「利他」の心が自然に生まれる、と川野泰周さんは強調します。そして語り始めたのは、禅の源である仏教の誕生物語。お釈迦様の修行のストーリーが、自利・利他といったいどのように結びつくのでしょうか――。前回の記事はこちら>>
言われた方も言う方も温かな気持ちになる「ありがとう」。世の中に幸せを循環させる優しくて力強い言葉です。大切な人と自分、そして物に対する感謝の瞑想をご紹介します。

感謝の瞑想


〔基本〕お世話になった人と自分に「ありがとう」

目を閉じて深呼吸をしてから、少しの間呼吸瞑想を行います。まず、自分が過去にお世話になった人と、その人にしてもらったことを思い浮かべます。たとえば両親や兄弟、学校や習い事の先生、勤め先の上司、友人など。それぞれの顔を思い出しながら、「◯◯してくれてありがとうございました」と心の中で感謝を言葉にして表しましょう。


「ピアノを一生懸命教えてくれてありがとうございました」「失恋したときに私の話を聞いてくれてありがとうございました」など具体的なことでも、「愛情たっぷりに育ててくれてありがとう」など漠然とした思いでもかまいません。

お世話になった人と自分に「ありがとう」

ここで深呼吸をしてリセットします。

次に現在の自分の暮らしに意識を向け、今自分がお世話になっている、助けられていると思う人をイメージして、同じように心の中で「◯◯してくれてありがとうございます」と伝えます。

再び深呼吸をしてリセットします。

最後は自分への感謝です。自分自身に「いつも頑張っているね、ありがとう」とお礼を言いましょう。イメージしにくい場合は、たとえば両足に「いつも一生懸命歩いてくれてありがとう」、心臓に「休まず動いてくれてありがとう」など体の一部に対する感謝を言葉にしてもよいでしょう。

下で紹介する「物に感謝をする瞑想」と組み合わせて就寝前などに行うと、穏やかな気持ちで一日を締めくくることができます。




〔応用〕愛用している大切な“物”に感謝する

人ではなく、自分がいつも大切に使っている物に対して感謝をする瞑想です。

どなたにも「これだけは手放せない」という大切な物があると思います。時計、眼鏡、アクセサリー、帽子、ぬいぐるみ、スマホ、ノートパソコンなど、思い出が詰まっていたり、大事な人からの贈り物だったり、毎日身に着けている愛用品だったり、仕事に欠かせない便利な物だったり。

愛用している大切な“物”に感謝する

まず目を閉じて少しの間呼吸瞑想を行います。その物を手元に置いて触れながら(あるいはイメージするだけでもよいでしょう)、それがどのように作られ、その後、人から人へどのような経路で自分の手元に届いたかを想像してみましょう。次に、自分が手にしてから今までの、その物にまつわる思い出を想起します。

最後に「いつも私を助けてくれてありがとう」「私を楽しませ、癒やしてくれてありがとう」など愛用品への感謝を表します。物をより丁寧に扱えるようになると同時に、自然と穏やかな立ち居振舞いや、温かみのある言葉の使い方ができるようになるでしょう。

ワンポイントアドバイス


つらい記憶を伴う対象は避けて
「ありがとう」という感謝を想起する瞑想なので、基本的には楽しい、懐かしいなど幸せな思い出とつながる物が多いと思います。ただ、記憶は連鎖していくものですので、とても怖かったりつらかったりした、トラウマにつながるような経験と紐づきやすい物や体の一部をイメージすることは避けたほうがよいでしょう。






〔お話ししてくれたのはこの方〕川野泰周(かわの・たいしゅう)さん


川野泰周さん

臨済宗建長寺派林香寺住職、精神科・心療内科医、RESM新横浜睡眠・呼吸メディカルケアクリニック副院長。1980年生まれ。慶應義塾大学医学部医学科卒業。精神科医療に従事した後、3年半の禅修行を経て2014年より実家の横浜・林香寺の住職となり、寺務と精神科診療、マインドフルネスの普及に力を注ぐ。近著に『精神科医がすすめる 疲れにくい生き方』(クロスメディア・パブリッシング)。公式ウェブサイト https://thkawano.website/
「寺子屋ブッダ」https://www.tera-buddha.net/

幸せ力を高めるマインドフルネス

01.1日10分の呼吸瞑想を習慣に“自分のための時間”を意識して持ちましょう

02.苦手意識は心のクセから生じる。気づきと“切り替える力”で、思い込みは変えられます

03.5人に1人が当てはまるHSP(繊細すぎる人)。人より鋭敏な感覚は、“能力”でもあるのです

04.イライラを抑え続けて脳が疲れていませんか? マインドフルネスで感情をしなやかに

05.日常生活の中ですぐに実践できる、歩く瞑想・走る瞑想を試してみませんか

06.過剰適応してしまう人も溶け込めない人も環境の変化は成長のチャンス。“ぶれない心”を育みましょう

07.不安やイライラを和らげる。大人も子どもも気軽にできる瞑想法をご紹介

08.居場所を替えれば、気持ちも切り替わる。非日常で行う“リトリート”。人は自然の中で回復していく

09.身近な自然の中でマインドフルに過ごす方法と、家の中でできるリトリートの工夫をご紹介

10.“ここ一番”のがんばりどきに 緊張からリラックスへ。集中力を高めるスキル

11.緊張をほぐし、気持ちを切り替える瞑想法を実践! 川野泰周さんの動画解説も

12.消そうとするほど逆効果。「不安」は居場所を作れば怖くない

13.今すぐできる、咄嗟の不安を軽く感じさせる心のテクニック

14.つらい経験やトラウマを乗り越えるには? 人に話す、書くことの効力

15.友人の話を聞いていたらぐったり…疲弊しにくい「聞き方」のコツ

16.今の時代にこそ大切な「自慈心(じじしん)」を育てる方法。自尊心との違いは?

17.いつでもすぐにできる「頑張った! 瞑想」でストレスに晒された自分を癒す

18.他人を思いやる気持ちは、自分自身に優しさを向けることから生まれる

19.すぐに実践できる「感謝の瞑想」で、気持ちを穏やかに
取材・文/浅原須美 イラスト/井上明香 撮影(川野さん)/鍋島徳恭

『家庭画報』2021年11月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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