幸福長寿に導く5つの活 第4回(全17回) 「幸福長寿」の決め手は、健康寿命をいかに延ばせるかということ。そして、それは自分でも心身の衰えを感じるようになった今からの生活の過ごし方とも深くつながっています。“現在の私と未来の私”のためのセルフメンテナンス法をご紹介します。
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腸にやさしい生活を習慣づけて快適な毎日を
〔お話ししてくれたのはこの方〕
鳥居 明先生鳥居内科クリニック院長 東京慈恵会医科大学医学部卒業、同大学大学院博士課程修了(医学博士)。神奈川県立厚木病院医長、同大学附属病院診療医長、同大学助教授を経て開業。専門は消化器病、消化器内視鏡学。腸の働きを知って、便の様子を毎日チェックしよう
腸は十二指腸から肛門までの長い管で、小腸は主に消化と栄養分の吸収、大腸は水分の吸収と便の形成を担っています。小腸から大腸に送り込まれた飲食物の残りかすは大腸内を進むにつれて水分が減り、やがて便となります。
医学的な便の評価には下の表のような「ブリストル便形状スケール」が使われます。
便のタイプ・形状(ブリストル便形状スケール)「3〜5が正常範囲で、必ずしも4のようにきちんと固まった一本のものでなくてもいいのです。腸の調子が気になる人は、便の色や形状、排便の回数を食事や運動、睡眠、月経周期などとともに日記につけておくと体調がわかるようになります」と鳥居明先生。毎日の排便回数は日常生活に支障がなければ何回でもよいそうです。
加齢は排便の状態が変わる大きな要因です。
便がたまって直腸が張ったときに感じる知覚が鈍くなり、残便感も感じにくくなります。また、便秘しやすくなる傾向があります。「抗うつ薬や抗ヒスタミン薬などによる薬剤性のもの、糖尿病や甲状腺機能低下症のような病気によるものがあり、認知症やパーキンソン病では初期から便秘症状があらわれることも多いのです」。
市販の便秘薬にはさまざまな種類があります。酸化マグネシウムは腎臓の悪い人や高齢者には使えない、大腸刺激性下剤は連用すると効き目が落ちるなど特徴があるので、薬剤師に相談しましょう。「市販の便秘薬は原則として急性の便秘に使うもの。近年、慢性便秘用の処方薬の種類が増えてきました。便秘に悩むなら便秘の治療が得意な医師にかかるのがおすすめです」。
下痢用市販薬には便を硬めにする薬とさらに強力な腸の動きを止める薬があります。「下痢は我慢せずに排便するのが基本。市販薬は一時的な対症療法です。続くようなら受診を」。
胃で胃酸と攪拌され、粥状になった食べ物は小腸で胆汁、膵液、腸液が加えられて消化され、栄養分が絨毛状の小腸壁から吸収される。残りの内容物が回腸から大腸に入るとアミノ酸や水分が吸収され、小腸では消化・吸収しづらいセルロースなどが腸内細菌で分解される。大腸は大きくぜん動し、内容物を直腸まで送り出す。便意は食後に胃が膨らんで結腸に指令が行ったとき(胃・結腸反射)、また腸内で形成されつつある便がぜん動運動で押されて直腸が膨らんだときに感じる。お通じ日記につける項目の例
●便の形状
●排便時刻
●排便時の息み(なし・軽い・強い)
●おなかの痛み・張り・不快感(なし・軽い・強い)
●残便感(なし・軽い・強い)
●便秘薬の服用(なし・あり)
●食事(回数・時刻)
●運動(回数・強度)
●薬の服用(名前・飲んだ回数)
●月経周期
排便時の姿勢をチェック
●排便しにくい姿勢便座に背すじを伸ばして座ると直腸と肛門がほぼ直角になり、肛門も締まって排便しにくい。
●排便しやすい姿勢一方、ロダンの彫刻「考える人」のように前傾してひじで体を支え、かかとを少し上げると直腸と肛門の角度が開いて排便しやすくなる。足の下に踏み台を置くのもよい。排便しにくいとき、残便感があるときにトライを。なお、便意を感じなくても決まった時間にトイレに行く習慣をつけると排便のリズムがついてくる。
取材・文/小島あゆみ 撮影/FumitoShibasaki〈Donna〉
『家庭画報』2021年11月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。