ゲノムで将来の病気がわかるの?
ゲノムとは「遺伝子をはじめとする遺伝情報全体」を指す言葉。遺伝子(gene)と全体を意味する接尾語(-ome)からできた語です。DNAや染色体は、その情報を示しており、私たちの体は約2万2000個の遺伝子でコントロールされています。
解説と監修:右田王介先生筑波大学附属病院 つくば予防医学研究センター副部長、准教授。聖マリアンナ医科大学臨床検査医学教授。国立成育医療研究センター研究員、聖マリアンナ医科大学小児科講師、筑波大学医学医療系小児科准教授を経て、現職。日本人類遺伝学会・日本臨床検査医学会・日本小児科学会・日本産科婦人科学会臨床遺伝指導医・臨床遺伝専門医。病気とゲノムにはどのような関係があるのでしょう。私たちの体は、細胞を複製することでできています。例えばがんの細胞は、この複製のときにさまざまな遺伝子に変化が起こり、遺伝子の働きが損なわれて発症します。
このように遺伝子による病気は何らかの理由で遺伝子に生じた変化が、必要な物質を作りすぎたり、秩序立った働きが損なわれて発症します。これらの遺伝子の変化による病気の発症の可能性や治療法、適する薬を探るために、個人の血液や唾液から遺伝情報を知り、活用するのがゲノム医療です。
がん組織の多数の遺伝子を同時に解析する「がんゲノム医療」を行う、一定の要件を満たした病院は、現在、全国に「がんゲノム医療中核拠点病院」12院、「がんゲノム医療拠点病院」33院、「がんゲノム医療連携病院」188院があり、「がんゲノム医療」を必要とする患者に対応しています。
ゲノムドック
高性能な機器を使い遺伝子を解析することで、将来かかりやすい疾患の予防や早期治療につなげることを目的としたドック。問診とカウンセリング、採血をした後、専門家グループで検討した疾患リスクの情報を報告してくれる(将来のすべての疾患がわかるわけではない)。その後の診断・治療については保険診療として、筑波大学附属病院など関連病院への紹介、連携も行う。ゲノムは変化することはないので、一般の健康診断のように毎年受ける必要はない。
つくば予防医学研究センターの「ゲノムドック」は個人の疾患予防のためだけではなく、臨床研究のデータを蓄積し、新薬開発や未来の医療に役立てる目的がある。「現時点でも自分の遺伝子情報を知ることで健康に役立てることができたと報告されています。今後、ゲノム情報の理解が進めば、同じ解析結果に対して、より進んだ判断が提示できるようになると考えています」(右田先生)。
ゲノムドックの流れ
(1)採血(8.5ml)をする。
(2)血液に由来するDNAを調整。
(3)AIロボット「まほろ」による高精度のゲノム解析。
(4)全ゲノムと疾患関連領域のデータを解析。
写真提供:ロボティック・バイオロジー・インスティテュート(5)筑波大学の関連診療科や臨床遺伝専門の医師による「ゲノミックボード」(専門家会議)が開かれ、解析結果について検討。
(6)「全ゲノム遺伝子解析結果報告書」がまとめられ、医師、遺伝子カウンセラーが同席して結果を報告。
科学的な根拠に基づいた結果とその対策が示され、その後の健康管理や病気の治療などについて、遺伝的特性から知ることができる。採血から2~3か月で結果報告となる。
ゲノムドック料金/57万2000円
●お問い合わせ/筑波大学附属病院つくば予防医学研究センター ゲノムドック TEL:029(853)4205(月曜~金曜9時~16時)