メディカルワードで知る体のメンテナンス法 第3回(全4回) 体のこと、病気や免疫のこと、日々新しくなるさまざまな情報にとまどっていませんか。今注目したいのは、全身の健康に関係がある「ゲノム」「免疫」「腸内環境」の3分野。その中で知っておきたいワードを各分野の先生に教えていただきました。
前回の記事はこちら>> 腸内環境を整える重要性は?
人間の腸内には、およそ1000種類、100兆個以上もの細菌が生息しているといわれています。よく耳にする「善玉菌」が約2割、「悪玉菌」が約1割、残りがどちらにもなる「日和見菌」。いつもおなかの調子が悪い人は、これら腸内細菌のバランスが、「2:1:7」から崩れている可能性が大。
腸内環境が改善されれば、おなかの調子がよくなるだけでなく、「免疫機能が上がり、病気にかかりにくくなる」「新型コロナの重症化リスクが下がる」「認知機能の低下が防げる」などという研究報告もあります。自分の腸内の状態を知り、生活習慣を見直し、体質改善を図ることが、QOL(生活の質)を高めることに直結します。
解説と監修:内藤裕二先生京都府立医科大学大学院教授。専門は消化器病学、免疫栄養学、抗加齢医学、腸内細菌叢。日本酸化ストレス学会理事長、日本消化器免疫学会・日本抗加齢医学会理事、2025大阪・関西万博 大阪パビリオンアドバイザー。『人生を変える賢い腸のつくり方』など著書多数。ビフィズス菌
体に有用な働きをする腸内細菌「善玉菌」の中でも、乳酸菌などに比べ圧倒的に数が多いのがビフィズス菌。食物を発酵させてビタミンや短鎖脂肪酸を生成する、消化吸収を助ける、腸の動きを促進して便秘や下痢を防ぐなどの作用がある。生後3か月児の腸内細菌は約99パーセントがビフィズス菌で、成人では10~20パーセントになり、60歳を超える頃からさらに減少する。「最近の若い男性は2パーセントくらいの人が多い傾向です。ビフィズス菌が減ると下痢になるんです。過敏性腸症候群の男性は下痢型が多く、女性は便秘型が多い」(内藤先生)。
腸内フローラ
腸内細菌の集まりを「叢(くさむら)」にたとえて「腸内細菌叢(そう)」、花畑にたとえて「腸内フローラ」と呼ぶ。腸内フローラには、善玉菌、悪玉菌、日和見菌がほぼ「2:1:7」の割合で存在し、そのバランスが崩れると、下痢、便秘、肌荒れ、さらに大腸がん、糖尿病など疾患の原因につながる。
免疫機能を整える、消化吸収を助ける、ビタミンを生成する、腸管運動を促進するなどの働きを持つ善玉菌の代表は、ビフィズス菌、乳酸菌、酪酸菌。悪玉菌は体に悪い影響を与える物質を作り出す菌で、ウェルシュ菌、大腸菌、バクテロイデス菌などの毒性株がある。善玉菌が食物を「発酵」させるのに対し、悪玉菌は「腐敗」させて分解する。
口から入った食物は唾液で分解され、さらに胃で分解され、小腸で分解・消化される。腸管の中の粘膜にはひだがあり、その中に細菌がいる「腸内フローラ」=花畑となっている。ディスバイオーシス
腸内では100兆個以上の細菌が、なるべく多種類存在することが好ましいなか、特別の細菌だけが増えるなど、腸内フローラが激しくバランスを崩している状態。血便、下痢、腹痛などを引き起こすことがある。病気の治療のために、強い抗生物質を投与・点滴したりした結果、腸内の善玉菌が死に、特定の菌だけが増えてバランスを崩すことも。
取材・文 嵯峨佳生子 撮影 田中 雅、柳原久子、本誌・大見謝星斗、伏見早織 イラスト いたばしともこ
『家庭画報』2022年11月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。