集中連載「口腔ケアで健康革命」第1回では、鶴見大学歯学部教授・斎藤一郎先生に、全身の老いと口腔老化の相関関係について教えていただきました。
鶴見大学歯学部教授
斎藤一郎先生歯周病が糖尿病や動脈硬化、認知症を引き起こす!
歯を支える組織や骨を破壊する歯周病は、歯を失う大きな原因になりますが、全身のさまざまな病気ともかかわっていることが解明されてきました。特に更年期世代は、歯周病の悪化が目立ってきます。
中高年の8割以上が歯周病にかかっているというデータがあり、加齢とともに歯や口腔の健康が損なわれるリスクは高まっていきます。
しかし、“おいしく食べられる”ことは健康で長生きするための必須条件。歯周病が原因で歯を失うと、しっかり嚙めなくなって十分な栄養がとれなくなり、そのことが健康寿命に重大な影響を及ぼすことは、さまざまな研究からも明らかです。
たとえば、65歳以上を対象とした追跡調査では、歯数が19本以下の人は、20本以上の人に比べて要介護状態になるリスクが1.2倍となり、残っている歯が少ないとそれだけ寝たきりになる恐れが増していきます。
さらに、ここ10年で、歯周病と全身のさまざまな病気との間には相関関係があることもわかってきました(詳細は次ページ参照)。
「そのブレークスルーとなった医学論文が、2007年、世界のトップ医学雑誌である『ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』に掲載された歯周病と動脈硬化の関連についての研究です」と鶴見大学歯学部教授の斎藤一郎先生は紹介します。
この研究では、動脈硬化を起こしている人に歯周病治療を継続的に行ったところ、60日後には狭くなっていた血管径が広がり、血管の炎症マーカーのE-セレクチンの数値も低下する結果となりました。
「つまり、歯周病を治すことで、動脈硬化の発症や進行を予防できる可能性が示されたのです」(斎藤先生)。