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健康

ロボットとの触れ合いが認知機能の衰えを防ぐ?未来の医療

2018.08.10

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未来の医療 第3回

未来の医療 進歩する生命科学や医療技術。わたしたちはどんな医療のある未来を生きるのでしょうか。「未来を創る専門家」から、最新の研究について伺います。前回の記事はこちら>>
見守りやコミュニケーションの機能を持つロボットが、家庭や介護施設などに入ってきています。なかでも、早くから医療・福祉分野に特化して開発されてきたロボット、パロ(PARO)には治療効果が証明されています。

今回は将来、医療現場や家庭に入っていく可能性が高いパロについて取り上げます。

柴田崇徳さん


“未来の医療”を創る人 柴田崇徳(しばた たかのり)さん
産業技術総合研究所 人間情報研究部門 上級主任研究員 東京工業大学 情報理工学院情報工学系 特定教授 米国マサチューセッツ工科大学(MIT) 高齢化研究所 客員フェロー

認知症患者の徘徊を減らし、不安やうつ、痛みに効果がある


パロ

ギネス記録で“世界で最もセラピー効果のあるロボット”に認定
重さは2.5キロ強で、目を開閉したり、首を振ったりし、鳴き声も出す。


パロは産業技術総合研究所(産総研)人間情報研究部門 上級主任研究員の柴田崇徳さんが開発したロボットで、タテゴトアザラシを模しています。

全長約55センチ、重さ2.5キロで、ヒトの赤ちゃんと同じくらいの大きさです。話しかけたり、なでたりすると鳴き声を出し、まばたきし、首や脚を動かします。

人工知能で自分の名前を覚え、話しかけられたときやなでられたときの状況を記憶するため、一体一体が異なる反応をするようになります。

柔らかい素材の触覚センサー、姿勢や体温を制御するセンサー、機械音がしないモーターを搭載し、ペースメーカー使用者に電磁波が影響しないように電磁シールドしてあります。

また、医療の現場での使用を考え、人工毛皮は制菌加工を施し、手入れのしやすさにも配慮しました。「通常10年以上の使用が可能です」と柴田さん。

柴田さんは開発当初から小児病棟や介護施設などで臨床実験を行ってきました。その結果、パロには、痛み、不安、うつ、ストレス、孤独感、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の改善効果があることがわかりました。

「パロと触れ合うと、前頭前野や側頭部の言語野の血流が増加します。パロが経験や知識を想起させ、気持ちを動かし、脳機能を活性化する効果があります」と柴田さんは説明します。

2006年から08年に、デンマークで国家プロジェクトとして認知症患者に対する臨床評価が行われ、パロによって徘徊や暴力などの問題行動が抑制され、向精神薬の低減が示された結果、今では8割以上の地方自治体がパロを導入しています。

また、米国でも09年に食品医薬品局(FDA)から神経学的セラピー用品として医療機器の承認を得て、治験での良好な結果から、最近、公的医療保険メディケアを適用し、痛み、うつ、不安、リハビリなどに処方されるようになりました。
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