男の更年期 女の更年期 50代は、女も男も輝きながらワンランク上の人生を謳歌する、黄金の人生のスタート地点です。だからこそ、ホルモンの力を高め新たな挑戦や夢の実現に向かうエネルギーを充満させたいーー。今は医学の力や、代替療法などでホルモンの分泌をコントロールし、ご自身が快適に生きる選択が可能に。人生設計に合わせ、体とのつき合い方を考える時です。
前回の記事はこちら>> 「テストステロン」が低下するとがんや生活習慣病の罹患率・死亡率が高まる
集中連載「男の更年期 女の更年期」第4回では、獨協医科大学 埼玉医療センター泌尿器科准教授 井手久満先生に、男性ホルモンと疾患の関係について教えていただきました。
獨協医科大学 埼玉医療センター泌尿器科准教授
井手久満先生テストステロンが高い人は健康で長生きできる
男性ホルモンの一種であるテストステロンは主に精巣で作られます。男性は胎児の頃からテストステロンをたくさん作って骨や筋肉を強くし、成長とともに男らしい体つきになっていきます。また、性欲や生殖機能を正常に保つためにもテストステロンは必要です。
「これ以外にも、テストステロンには血液を作ったり、動脈硬化や内臓脂肪の蓄積を予防したり、記憶力や認知力、判断力を高めたりするなど、さまざまな働きがあり、全身の健康と深くかかわっています」と男性更年期の治療に積極的に取り組む獨協医科大学埼玉医療センター泌尿器科准教授の井手久満先生は説明します。
そのため、テストステロンが急激に減り、女性の更年期障害と同様の症状を引き起こすLOH症候群(late-onset hypogonadism/加齢男性性腺機能低下症候群)にかかると、肥満、高血圧、糖尿病、がん、心血管疾患、うつ病、筋肉量減少、骨粗しょう症などの罹患率と死亡率が高まることが明らかになっています。
「欧米の研究では全死亡率においてテストステロンが高い人のほうが長生きすることがわかっていますし、心筋梗塞など心血管疾患や心不全との関係を調べた日本人のデータでもテストステロンが高い人のほうが生存率が高い結果となっています(図1参照)」と井手先生はテストステロンの量が男性の長生きの決め手になることを示します。
テストステロンと心疾患生存率との関係
Akishita M et al:Atherosclerosis;210:232-6,2010日本人男性をテストステロン値の高い群、中くらいの群、低い群の3群に分け、心疾患で生存した人がどのくらいいるのか調査を行ったところ、テストステロン値が高いほうが心疾患による生存率が高く、長生きすることが判明している。