お医者さまの取扱説明書 総合内科医の尾藤誠司先生に、患者と医師の良好コミュニケーション術を教わります。
記事一覧はこちら>> 外来診療と異なり、入院生活は普段の暮らしから完全に切り離された“非日常”。その間、生活リズムも診療のペースも病院主導で進み、さまざまな戸惑いや不安が生じます。入院中の余計なストレスは少しでも軽減したいもの――。そのためのノウハウを伺います。
尾藤誠司先生独立行政法人国立病院機構 東京医療センター 臨床研修科医長・臨床疫学研究室長
通常入院でも、緊急入院でも患者は自分のペースを保てない
具合が悪いから1か月くらい入院してゆっくり静養しよう――こんなのどかな入院がまかり通ったのははるか昔のこと。
今は病院の経営上、入院には手術や抗がん剤治療など明確な目的が必要で、治療内容がはっきりせず退院までのプランの立ちにくい入院に対しては、多くの病院が消極的です。
もう1つ、急な症状に襲われて救急車で運ばれ、そのまま緊急入院するケースがあります。特に心疾患や脳卒中が疑われる場合は、いったん症状が落ち着いて本人が帰宅を望んでも、医師の判断で入院が決められます。再び発作を起こすと命にかかわる危険があるため、24時間体制の観察が必要なのです。
いずれにしても本人の希望や症状のつらさの程度と、医療者側の考える入院の必要性は必ずしも一致しません。
そしてやるべきことを終え、患者の状態が改善したら速やかに退院するのが原則。したがって入院期間も必要最低限に短くなる傾向にあります。
「このような入院生活で普段のペースを保つことは難しく、患者さんは相対的に弱い立場に置かれます。そして限られた日数の中で検査や治療が次々と行われ、慌ただしく時間が過ぎていく。
この間さまざまな不自由さや不安を抱くと思いますが、体の回復のためにも入院中の余計なストレスはできるだけ解消することが大事です」(尾藤誠司先生)。