知っておきたい! 頼りになる専門外来 治療を続けているのによくならない、今の治療効果に満足していない――。このような悩みを抱える人は少なくありません。こんなときに頼りになるのが「専門外来」です。一般外来ではなかなか受けられない個別性の高い治療が期待できます。今回は、「若年性アルツハイマー病外来」の後編をお送りします。
前編はこちら>> アルツクリニック東京 若年性アルツハイマー病 院長
新井平伊(あらい・へいい)先生1978年順天堂大学医学部卒業。84年順天堂大学大学院修了(医学博士)。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師を経て、97年より同大学医学部精神医学講座教授。99年に国内初となる「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年4月より現職。「アルツハイマー病研究者 世界トップ100」に選出されたことがあり、若年性アルツハイマー病の名づけ親でもある。「認知症になっても人生終わりじゃない」をモットーに患者と家族の生活支援にも力を注ぐ。生活習慣病のコントロールがアルツハイマー病を防ぐカギに
若年性アルツハイマー病の進行を食い止めることに心血を注いできた新井先生は今、集大成としてアルツハイマー病の先制医療プログラムの開発に挑んでいます。
「残念ながら現在、発症したアルツハイマー病を治すことはできません。そこで、発症する前に予防することを考えたのです」。
新井先生が注目したのはSCD(Subjective Cognitive Decline/主観的認知機能低下)といわれる段階です。MCI(軽度認知障害)の前段階にあたり、物忘れなどの自覚症状はあるものの、画像検査や心理検査を行っても異常がない状態のことです。
しかし、アミロイドβたんぱくの沈着は始まっているので、アミロイドPETで調べると、将来アルツハイマー病を発症する可能性が予測できます。
「この段階から発症を遅らせるためのサポートを続け、発症しないまま寿命を全うすることを目指します」と新井先生は狙いを語ります。
アミロイドPETを活用するドックで発症前の状態を判定し予防に取り組む
この方針に従い、スタートしたのが健脳ドックです。アミロイドPETとMRI検査でアミロイドβたんぱく量と脳の萎縮状態を調べて介入レベルを判定し、生活の見直しが必要な場合には、その人の認知症リスク因子(糖尿病、肥満、睡眠不足など12種類)を確認します。
そのうえで発症リスクスコアを算出し、個別に作成した予防の処方箋に従って生活改善を助けます。
「生活習慣病のコントロールがアルツハイマー病を予防するカギを握っています。併設する内科や内分泌科と緊密に連携し、ワンストップでサポートできるのも当クリニックならではの強みです。
健康長寿を実現するうえでアルツハイマー病の視点から心身の健康を見直すことがますます重要になってくるでしょう」
認知症の進行と各種検査で異常が発見できる時期
アルツクリニック東京 提供資料をもとに作成前編の記事に戻る>> Information
アルツクリニック東京
東京都千代田区丸の内1-7-12 サピアタワー7階
- アルツクリニック東京 若年性アルツハイマー病 初診専門外来 〔主なスタッフ〕医師5名 看護師3名 臨床心理士3名 事務スタッフ4名 〔主な連携先の診療科〕近隣の循環器・消化器内科クリニック、眼科クリニック、大学附属病院、在宅医療診療所 同クリニックへの受診を希望する場合、初診・再診ともに予約なしでも受診できるが、予約が優先となるため、電話による事前予約が望ましい。受診の詳細については同クリニックのHP「診察予約」をご参照ください。 https://alz.tokyo/medicalguide/ 〔費用〕 検査・治療 保険診療 認知症予防脳ドック「健脳ドック」 自費診療60万円(税別)
【参考情報】 ●認知症の疑いがあり相談や受診をしたいとき 国では認知症を専門的に支援する「認知症疾患医療センター」の整備を進めており、2018年1月末現在、全国で422か所の医療機関(大学病院、総合病院、精神科病院、診療所)が指定されている。若年性認知症支援コーディネーターが配置されている施設もある。指定医療機関の所在は都道府県の担当窓口に問い合わせるか、自治体HPから探せる。 ●若年性アルツハイマー病の専門医を探したいとき 日本認知症学会では「認知症専門医」を認定しており、HPで都道府県ごとに認知症専門医を検索できる。 日本認知症学会「専門医一覧はこちら/日本認知症学会認定専門医」 http://dementia.umin.jp/g1.html
取材・文/渡辺千鶴 撮影/八田政玄
「家庭画報」2019年8月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。