「私の人生は、音楽音楽音楽……。いまだに感動と発見があります」―ピアニスト 室井摩耶子さん(98歳)
ブラウス2万2000円 スカーフ1万9000円/ともにイーナ イヤリング3万2084円/アビステ 時計、リング/室井さん私物室井さんの98年の歩み
1921年(大正10年)東京生まれ。6歳よりピアノを始める
1941年(昭和16年)東京音楽学校(現・東京藝術大学)を首席で卒業
1945年(昭和20年)日本交響楽団(現・NHK交響楽団)ソリストとしてデビュー
1956年(昭和31年)「モーツァルト生誕200年記念祭」の日本代表としてウィーンへ
1960年(昭和35年)ヨーロッパデビュー。以後、海外を拠点に13か国でリサイタルを重ねる
1964年(昭和39年)ドイツで出版された『世界150人のピアニスト』に選ばれる
1982年(昭和57年)日本で真剣勝負をしようと61歳で帰国。精力的に演奏活動を行う
1995年(平成7年)演奏しながら曲の魅力を語る「トーク・コンサート」を開始
2019年(令和元年)文化庁長官表彰を受ける。現在は、『月刊ショパン』にてエッセイを連載
ピアノとの対話を積み重ねる日々。
果てしない音楽への情熱がエネルギーに
「音楽の素晴らしさを世の中に伝えなければ。神様、私にもう少し時間をくれませんか」―室井さん
イヤリング24万6000円/ペルラジオーネ今だからわかる音の美。音楽に心ときめく日々
「今、バッハに夢中なの。なんて叙情的で美しい音の使い方をするのかしら……。98歳になってやっと気がつくなんて、摩耶子(まやこ)、遅いじゃない!」。室井摩耶子さんはそう自分に怒りながら、新しい発見に心をときめかせています。
39歳でデビューしたヨーロッパで、室井さんはプロフェッショナルの厳しさを目の当たりにします。高名な演奏家が、勉強のためにあえてしばらく“地下に潜る”。数年後に復活したときの演奏の素晴らしさ。
衝撃を受けた室井さんは「私も自分の中に真の芸術家を育てなければ。外国人という立場に甘えてなどいられない」と帰国。61歳の覚悟でした。
【欧州で盛んに演奏活動を行い、プロの厳しさを知った50代の頃】この直後の61歳で拠点を日本に移し、真の芸術家を目指した。室井さんの頭の中に「定年」という概念は、そのときも今も、これからも存在しない。やがて音楽は音で書いた詩・戯曲・小説であると気づいた室井さんは、74歳で「トーク・コンサート」を始め、20年以上続けています。
この年だからわかる音楽の素晴らしさを世の中に伝えたいー。高まり続ける音楽への情熱が室井さんを突き動かしています。
「ねぇ、そろそろ聴かない?」。室井さんが待ちかねたかのようにピアノに向かい、バッハの「平均律八番」を弾き始めました。
【長年の功績が認められて、2019年度文化庁長官表彰を受ける】音楽を純粋に追求し続ける人生が栄誉ある賞という形になった。お気に入りのイブニングドレスで表彰式に臨む室井さん(2019年3月)。