まだ発症はしていないけれど気になる病気は、通常の人間ドックや健診、診療ではチェックできないものもあります。生活の質を下げる重大な病気、あるいは発症を予想しにくい病気を調べる特色ある検診・人間ドックを紹介します。
【健脳ドック】アルツクリニック東京
アルツハイマー病の予防に向けて脳の状態をチェック
アルツクリニック東京 院長
新井平伊さん
1953年生まれ。順天堂大学医学部卒業後、東京都精神医学総合研究所精神薬理部門等を経て、97年に順天堂大学医学部精神医学講座教授に就任。専門は認知症。同教授を退任後、2019年4月にアルツクリニック東京を開設。認知症が気になる人に特化
物忘れが多くなった、新しい家電製品の使い方がおぼつかない、とはいえまだ認知症とは思えないし、病院にかかるのもためらわれるというとき、認知症に特化した人間ドックがあります。
認知症には大きく分けて、アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)、血管性認知症、前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症の4つがあり、現在の認知症患者の6〜7割がアルツハイマー病と推測されています。
順天堂大学医学部教授として認知症の診断や治療に携わってきた新井平伊(へいい)さんは、2019年春にアルツクリニック東京を開設、認知症の治療に当たるとともに、特にアルツハイマー病に特化した「健脳ドック」を始めました。
アルツハイマー病は脳の神経細胞が障害されて数が減少し、やがて脳が萎縮してくる進行性の病気です。
その原因は不明ですが、アミロイドβたんぱくが沈着して、シミのような老人斑が見られ、タウたんぱくの異常から神経細胞内の線維も変化してくることがわかっています。
「現状ではアルツハイマー病の治療には限界があります。一方で、アミロイドβたんぱくは、アルツハイマー病の症状が出る20年以上前から沈着しているため、症状が出る前からその沈着の具合を見ていけば、予防につながる可能性があると考えています」と新井さん。
通常の脳ドックではMRI検査を使うので、この早い段階のアミロイドβたんぱくの沈着を調べることはできません。
しかし健脳ドックにはアミロイドβたんぱくを描出する特殊なPET(陽電子放出断層撮影)装置があり、軽度の認知障害(MCI)が出る前段階である主観的認知機能低下(SCD)の段階で起こっているアミロイドβたんぱくの沈着を見つけられます。
アルツハイマー病の症状が出る15~20年前から早期のアミロイドβたんぱくの沈着が調べられるアミロイドPET装置。核種をつけた検査液を静脈内に注射して撮影する。さらに、血液検査による現在の健康状態のチェック、問診や質問票による生活習慣のチェックなどを通じて、受診者それぞれのアルツハイマー病のリスクを調べます。
もちろん通常の脳ドックと同様に、脳血管の狭窄や動脈瘤(くも膜下出血の原因になる)のような脳卒中の危険性も見つけることが可能。
このPET装置での検査も含めて、1日でこれらの検査や診察が終わり、その日のうちに結果を聞くこともできます。
リスクとなる生活習慣病を治療
アルツハイマー病の危険因子としては、遺伝的な要因のほかに、糖尿病、高脂血症、高血圧症といった生活習慣病が関連しているとされています。これらは血管性認知症にも共通する因子です。
そのため、「生活習慣を整え、生活習慣病の有無を調べて、その治療や予防をしていくことがアルツハイマー病の予防になると考えられます。さらには難聴、うつ病、運動不足、睡眠不足、アルコールの多飲、喫煙、社会的な孤立、頭部外傷などにも注意が必要です」と新井さん。
健脳ドックでは下図にあるように「異常所見なし」「発症リスクあり」「前駆状態」「軽度認知障害疑い」「初期認知症疑い」といった5つのリスク分類に基づいて、生活習慣の改善や生活習慣病の治療といった介入レベルを判断します。
通常の脳ドックよりも15~20年前に脳に沈着する特殊なたんぱくを発見できるアミロイドPET検査、MRI検査、血液検査などに加え、生活習慣のチェックからアルツハイマー病をはじめとする認知症のリスクを評価。結果に合わせて、生活習慣の改善や生活習慣病の治療を行うことで、発症を予防できる。そして、介入が必要とわかった受診者には、治療や生活習慣のチェックなどの定期的なフォローを行います。
アルツハイマー病をはじめとする脳の異常を症状が出る前に見つけ、できるかぎり予防していく、その入り口として健脳ドックは心強い存在といえそうです。
アルツクリニック東京住所:東京都千代田区丸の内1-7-12 サピアタワー7階
TEL:03(3212)0003(代表)
URL:
https://alz.tokyo認知症予防脳ドック「健脳ドック」60万円(税別)
※受診の詳細や健脳ドックの予約はホームページを参照。