心と体の新習慣 第9回(全11回) 世界的に新型コロナウイルスの感染が止まりません。一方で、外出自粛などの時期を経て、多くの地域で新型コロナウイルスと共に生きる“ニューノーマル(新しい常識・常態)”が始まっています。産業衛生や感染症などの専門家に、今後の新しい生活様式について聞きました。
前回の記事はこちら>> ※2020年6月30日現在の情報をもとに記載しています。『家庭画報』2020年9月号掲載。この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。 withコロナ時代のフレイル予防【実践編】
健康習慣の中でもフレイルの予防として注目されているのが運動、食事、口腔ケア、知的活動を中心とした人づきあいです。日常生活においてどのように取り入れていけばよいのか、それぞれの実践ポイントについて5人の専門家に伺いました。
今回は食事について山田 悟先生、真田真理子さんに伺います。
【栄養】たんぱく質+脂質で筋肉と骨の減少を食い止める
山田 悟先生慶應義塾大学医学部卒業。2011年より北里研究所病院糖尿病センター長。「ゆるやかな糖質制限食」の啓発と普及に精力的に取り組んでいる。真田真理子さん女子栄養大学栄養学部卒業。2012年より北里研究所病院栄養科主任。管理栄養士、日本糖尿病療養指導士。運動量が少ない人は毎日の食事をいっそう大切に
「30代から始まっている筋肉の減少を食い止め将来のフレイルを防ぐために、50代の今からしっかり取り組んでおきたいのが筋肉を維持・増量する食事です。特に運動習慣を持たず運動量が少ない人は、毎日食べている食事をおろそかにすると取り返しのつかないことになります」と山田 悟先生は警告します。
山田先生がすすめる筋肉を維持・増量する食事の実践ポイントはとても簡単で、誰でもすぐに取り組めます。
1つはたんぱく質の量を意識的に増やすこと。中高年になるとたんぱく質から筋肉を合成する力が低下してくるため、20代と同じように筋肉をつくるには1食あたり20グラムのたんぱく質が必要になります。
「お肉では100グラム、豆腐では1丁に換算される必要量を1食の中で無理なくとるには、肉類・魚類・卵・大豆製品のうち2品目は必ず食べるようにしましょう」と真田真理子さんは摂取のコツを示します。
もう1つのポイントは脂質(油)をしっかりとってエネルギー量を増やすこと。エネルギーが足りないと、たんぱく質は優先的にエネルギー源として使われ、筋肉合成にまわらなくなるからです。
「油が体に悪いといわれたのは過去のこと。今では心筋梗塞や脳卒中の発症リスクを低減することがわかっています」(山田先生)。
「調理に使う、料理にかける、脂質の多い食材を選ぶなど油をたっぷりとることを日常の食生活で意識してみましょう」(真田さん)。