今回のゲストは、松岡さんが「以前からお話を伺いたかった」という渡辺守成さん。国際オリンピック委員会(IОC)委員、国際体操連盟会長など、スポーツ界で数々の要職を託され、世界を舞台に活躍しています。対談では、松岡さんのまっすぐな眼差しと問いかけに応え、渡辺さんの言葉も次第に熱を帯びていきました。 *『家庭画報』2021年6月号掲載。この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。本取材は感染予防対策を徹底して実施しました。
貫禄たっぷりの渡辺さんとその後方で微笑む松岡さん。一見合成写真のようで、さにあらず。撮影場所はオリンピックの体操とパラリンピックのボッチャが行われる有明体操競技場です。 松岡さん・スーツ、シャツ、靴/紳士服コナカ第33回
国際オリンピック委員会(IOC)委員、国際体操連盟会長
渡辺守成さん
渡辺守成さん MORINARI WATANABE1959年福岡県生まれ。高校時代に体操を始める。東海大学在学中に留学先のブルガリアで新体操に魅了され、84年に入社したジャスコ(現イオン)でその普及に尽力。以後、体操と新体操の発展に情熱を注ぎ、2017年より国際体操連盟会長。18年10月に国際オリンピック委員会(IOC)委員に就任。現在、日本体操協会顧問、日本新体操連盟常務理事、日本アーバンスポーツ支援協議会会長、IOCのボクシング特別チームの座長も務める。世界で戦うIOC委員は現役サラリーマン!
松岡 今日の僕の願いは1つ。世界で戦える、戦っている日本人がいることをみなさんに伝えることです。渡辺さんはサラリーマンでありながら、IOC委員で国際体操連盟会長、さらにアーバンスポーツやボクシングの世界でも重責を担われています。でも、最初から今のようなポジションを目指していたわけではないように思うのですが、いかがですか。
渡辺 自分からなりたいと思ったことは一度もないですね。国際体操連盟の会長に立候補したのは、前会長にいわれたから。その1年後くらいにIOCのバッハ会長から呼ばれて行ったら、「IOC委員にならないか」と。そのときが初対面でした。
松岡 初対面でいきなりですか?
渡辺 いきなりです。一瞬固まって「いやぁ」といったら、「なりたくないのか」と聞くので、「私は仕事人間で、名誉としてのIOC委員なら興味がない。仕事をくれるのなら喜んでやります」と答えました。バッハ会長は「ハハハ、わかってるよ」と笑顔で応えてくれました。
「渡辺さんは世界を舞台に発信し、戦っている。日本人に勇気をくださる存在です」── 松岡さん
松岡 そんなやり取りがあったんですね。渡辺さんは、問題提起をして解決していく情熱がとてつもないかただから、大事な仕事を次々に頼まれるのだと思います。
渡辺 あなたのような情熱はないですよ。僕は与えられた仕事で何が問題かを見つけて解決するということが、サラリーマン生活で体に染みついてるだけです。
松岡 僕はそれが情熱だと感じるんです。渡辺さんの情熱、リーダーシップが人を動かすのだと思います。
渡辺 問題の上っ面ではなく、根本を解決するために率先して動けば、人はついてくるものです。バッハ会長からよく「IOC委員になって人生が変わっただろう」と聞かれるけど、「何も変わりません。忙しいばっかりで」と返しています(笑)。
松岡 渡辺さんはきっと、相手が誰だろうと、ご自分の考えをはっきりいえるのですね(笑)。僕たち日本人に勇気をくださる存在です!