1月6日に発表された、東京2020オリンピックの卓球日本代表内定選手。女子シングルスは世界ランキングの日本人上位2名、伊藤美誠選手(19歳。混合ダブルスも内定)と石川佳純選手(26歳)、団体戦メンバーは平野美宇選手(19歳)が選ばれました。3選手のひたむきな努力と活躍、苦しむ姿も見てきた松岡さんがエールを送ります。
写真右から石川佳純選手、伊藤美誠選手、平野美宇選手。2019年世界卓球日本代表記者会見にて。写真/YUTAKA/アフロスポーツお母さんコーチが育てた卓球女子の3選手
東京2020大会の卓球日本代表選手が発表されました。苦しい戦いを経て正式な内定を得たみなさん、おめでとうございます!
女子は早々に内定を確実にした伊藤美誠選手、昨年12月に日本人選手2位に浮上し、内定を引き寄せた石川佳純選手、そして、石川選手に敗れ、内定が年明けまで持ち越された平野美宇選手。一人一人いろいろな思いがあると思いますが、みなさん、金メダルを狙える実力の持ち主です。これからの半年間はオリンピックの準備に集中できる貴重な期間。悔いが残らないように過ごしてほしいです。
卓球女子というと、真っ先に思い浮かぶのは2018年に現役を引退した福原 愛さんではないでしょうか。卓球選手だったお母さんの指導のもと、幼い頃から猛特訓を重ね、日本卓球界を牽引する選手に成長。ロンドンオリンピックでは日本チーム初のメダル獲得にも貢献しました。この系譜は今も受け継がれていて、卓球界にはお母さんコーチに育てられた選手が少なくありません。
僕は日本の女子卓球界が真の意味で開花したのは、伊藤美誠選手、平野美宇選手の登場からではないかと思っているのですが、このお二人もお母さんが名コーチです。特に美誠さんのお母さんは、僕もお会いしたことがありますが、人並み外れた情熱と発想の持ち主です。
2019年ITTFワールドツアーグランドファイナル女子シングルス準決勝戦の伊藤美誠選手。写真/西村尚己/アフロスポーツ“みまパンチ”で狙うは3冠
美誠さんのお母さんが寝ている娘の耳元で毎晩、「勝てる勝てる、中国怖くない」などとささやいていたのは有名な話ですが、効果が上がるよう、必ずレム睡眠のタイミングで行っていたと聞いたときは驚きました。実際、美誠さんは「中国を怖いとは思いません」と言い切っていますから、お母さんの作戦は大成功です!
中国といえば、以前、美誠さんが「自分一人で強くなれることはない。強い選手に負けても、その敗戦から学んで成長することが大事。だから、中国の強い選手は必要なんです」と話すのを聞いて、トップ選手になると確信しました。そんな美誠さんにも、勝てずに苦しみ、自分の卓球に迷いが出てしまった時期があります。彼女はそのとき、3日間だけ練習を休んで温泉へ行ったのだそうです。そこで「一番大事なのはお母さんの基本練習だ」と気づき、幼い頃やっていたフットワークの練習など、もう一度基礎から徹底的に鍛え直して自分の卓球を取り戻したことを教えてくれました。
美誠さんには、本人が“みまパンチ”と名づけた素晴らしい武器があります。腰を落としてボールの上がりっぱなを叩き、パンチをするようにラケットを前に押し込むという技。この強烈なフォアハンドは、中国人選手からも恐れられています。
東京2020では、ぜひ美誠さんらしい攻めの卓球で、目標に掲げている「(シングルス、団体戦、混合ダブルスで)金3つ」を実現してもらいたいです。彼女にはそれだけの実力があります!そして、何よりも今回はホームですし、チャンスは十分にあります。