海辺の陽光となだらかな丘が織りなす自然公園
トスカーナ州南部 地中海沿いのマレンマ地方は、起伏に富んだ同州のなかでは比較的なだらかな丘が広がる土地。灌漑技術が未熟だった昔は、湿地帯特有のマラリアに悩まされることも少なくありませんでしたが、その分、ありのままの自然が残っている希有な場所でもあります。それゆえ、1975年にはこの一帯のおよそ9000haがマレンマ州立公園に指定され、湿原、海岸、松林、伝統的な畑や牧草地といった農地は、現在も乱開発が厳しく規制されています。イタリアではわずか7か所しか授与されていない、優れた自然保護活動が行われている地域にEU議会が授与するEUディプロマを、1992年以来ずっと授与され続けているということも、この公園の素晴らしさを物語っています。
その自然公園のなかに位置するバディオーラ農園は、もとはトスカーナ大公メディチ家の所有地であり、19世紀初頭には、最後のトスカーナ大公であったレオポルド2世ロレーヌ公が主となりました。マレンマの手つかずの自然に魅了されたレオポルド2世は農園を整備し、後のランダーナ・リゾート本館となる屋敷を美しく改装。マレンマ地方の農地改良に尽力したのです。その後、所有者は幾度か変わりましたが、2000年に現オーナーの手に渡るまで、レオポルド2世が愛した自然はその姿を守り続けていたのでした。
バディオーラ農園では葡萄畑とオリーブ畑、その合間に森が点在する。葡萄畑の向こうに見える糸杉と笠松の並木が南部トスカーナらしい。天気の良い日には庭に設えられたテーブルで朝食やランチを。