生産量日本一を誇る山形県の「さくらんぼ」、一粒に込められた物語

燦々と降り注ぐ日差しが夏の訪れを感じさせる頃、山形県では、生産量日本一を誇るさくらんぼが旬を迎えます。そもそも山形県でさくらんぼ栽培が定着した理由は、気象条件や土壌条件等が非常に適していたからだといわれています。

 

[caption id="attachment_1077" align="alignnone" width="670"] 酸味が少なく甘みがギュッと詰まった、収穫直前の「紅秀峰」。大粒で光沢があるのも特徴。[/caption]


山形県農林水産部園芸農業推進課の岸 哲嗣さんによると、さくらんぼは、雨にあたると実割れして商品として売れなくなってしまうことや、完熟しておいしくなったものは果実が柔らかく輸送性に劣るなどの理由から、昭和50年代までは缶詰用の品種「ナポレオン」が生産量の大部分を占めていたといいます。しかし昭和53年のアメリカ産さくらんぼの輸入解禁を契機に、良食味な生食用品種の「佐藤錦」の生産に切り替え、雨が降っても裂果しないよう雨よけ施設の導入を進めながら、山形県は、現在の高級さくらんぼの一大産地へと発展してきました。

人気ブランドとして定着した「佐藤錦」のほかに、現在県が力を入れているのが「紅秀峰」です。 とはいえ、平成3年に品種登録申請をされたにもかかわらず、出荷率が上がらずなかなか市場には出回りませんでした。

というのも、さくらんぼは植え付けてから成木になるまで8年程度の期間を要し、安定的に出荷できるまでには15年ほどの期間が必要だからです。 また「紅秀峰」は、高級品として主に農家直売の贈答用として流通することが多いため、首都圏の小売店までは出回りにくかったというのも理由の一つです。 しかし木が充実して本数も増えたおかげで、近年では全国的に販売範囲が拡大し需要も増えているそうです。

 

[caption id="attachment_1081" align="alignnone" width="670"] 生育期のさくらんぼの木。満開の花。[/caption]

[caption id="attachment_1080" align="alignnone" width="383"] 「毛ばたき」といわれる人工受粉。[/caption]

[caption id="attachment_1079" align="alignnone" width="670"] 摘果作業。[/caption]

[caption id="attachment_1083" align="alignnone" width="670"] 繊細なさくらんぼを傷つけないように、一粒一粒丁寧に人の手で摘み取る。[/caption]

山形県ではさくらんぼ市場のさらなる活性化のために、この度「さくらんぼ世界一プロジェクト」を立ち上げました。大ぶりなものが好まれる世界市場でも広く認知されるよう4Lサイズの大玉品種の開発などに着手し、人気と品質で世界一を目指していくとのこと。先人たちのたゆまぬ技術開発と生産者の努力によって紡がれるこれからの“山形さくらんぼ物語”にも注目しましょう。

 

[caption id="attachment_1082" align="alignnone" width="670"] 出荷を待つ「佐藤錦」。つやと鮮やかな赤色がまるで宝石のよう。[/caption]

[caption id="attachment_1084" align="alignnone" width="670"] 農業大国山形県においても随一の特産品と称されているだけあって、さくらんぼの加工品も充実している。その中の一つ、一昨年に「山形ふるさと食品コンクール」において最優秀賞（山形県知事賞）を受賞した、「杵屋本店」の「山形ショコらんぼ」は、県産さくらんぼのセミドライフルーツを使ったトリュフチョコレートで、さくらんぼパウダーでコーティングされている。なめらかな口どけと上品な甘さ、ふわっと広がるさくらんぼの香りが絶妙で贈答用としても人気。4個入り1000円（税込み）から。オンラインでも購入可能。[/caption]

 

●「山形ショコらんぼ」についてのお問い合わせは、「杵屋本店」
TEL：0120-043-250
営業時間：9時～17時
定休日：日曜
URL：http://www.kineya.co.jp/

●それ以外のお問い合わせは、山形県農林水産部園芸農業推進課　TEL：023-630-2466まで。