365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
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鮮やかなオレンジ色の花、大きくて艶やかな葉。トロピカルな雰囲気のカンナは夏によく似合います。■属科・タイプ:カンナ科の春植え球根
■花期:6月中旬〜10月
■草丈:45〜150cm
トロピカルな花も、カラフルな葉も魅力的
カンナというと校庭の花壇に咲いていた記憶がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。私の場合、カンナと聞いて思い浮かぶのは松任谷由実さんの歌『カンナ8号線』、1981年にリリースされたアルバム『昨晩お会いしましょう』に収録されている曲です。
この歌を初めて聞いたとき、カンナ8号線が東京の環状八号線の世田谷から杉並にかけてのエリアだろうとすぐにわかりました。当時、そのエリアの中央分離帯にはカンナが赤や黄色のトロピカルな雰囲気の花を咲かせていたからです。その光景を“カンナの花が燃えて揺れていた”と表現した松任谷さんの作詞の才能に当時の私は惚れ惚れ。夏の散歩道でカンナを見つけると、いまでもつい口ずさみたくなります。
カンナは熱帯アメリカ原産の球根植物で、暑い環境を得意とします。暑いほどよく育つともいわれています。夏の炎天下で原色系の鮮やかな花を咲かせているのを見ると、本当に夏がよく似合う花だと実感します。
ただ、以前より見かけなくなった気がしていたところ、最近、別の魅力でガーデナーさんたちがこぞってカンナを利用しているのを知りました。カンナはとても大きな葉が何枚も出ますが、その葉の美しさ、バリエーションの豊富さが庭づくりで注目されています。
艶やかな緑葉、シックな銅葉(どうば)、斑入りの美しい葉などのバリエーションがあり、花のない時期でも美しい景色をつくるのに欠かせないカラーリーフとして、夏の花壇に加えられているのをよく見かけます。大きな葉は存在感もあり、庭のアクセントとしての効果大。カンナを見かける機会がまた増えてきて、ユーミンの歌を口ずさみたくなる衝動を抑えるのに苦労しています。
栽培の難易度
4月下旬〜5月に日当たりがよく、水はけのよい場所に球根を植えつけます。花房全体が終わったら根元で切り取ります。暖地では植えっ放しでも翌年また咲きますが、耐寒性がやや弱いので、温暖地や寒冷地では、葉が完全に枯れたら球根を掘り上げて、乾燥した場所で貯蔵するのがおすすめです。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい ・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。