365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
一覧はこちら>> カワラナデシコ
これが大和撫子の語源となったカワラナデシコの花。切れ込みの入った繊細な花は、淡いピンクがとても涼しげ。■属科・タイプ:ナデシコ科の宿根草
■花期:6月〜9月
■草丈:40〜50cm
秋の七草のナデシコはこの花です!
「ハギにキキョウ、クズ、フジバカマ、オミナエシ、オバナ、ナデシコ あきのななくさ」。
これは秋の七草を語呂よく並べたもので、個人的にはこの並びがいちばん覚えやすいと思います。まだ暑さの残る日々ですが、秋の七草は、すでに咲き始めています。
以前の記事でキキョウを紹介しましたが、旧暦の秋は7月〜9月。秋の七草を選抜した万葉の時代の8月といえば、もう秋だったのですね。
そもそも秋の七草といわれるようになったのは、『万葉集』の巻第八に掲載されている山上憶良の2首の歌が由来といわれています。
秋の野に 咲きたる花を 指折り(およびをり) かき数ふれば 七種(ななくさ)の花
萩の花 尾花 葛花 なでしこの花 をみなへし また藤袴 朝貌の花
尾花とはススキのことで、朝貌=あさがおとは今でいうキキョウのことではないかといわれています。
ナデシコは学名をダイアンサスといい、世界中に多くの種類があります。そのなかで、秋の七草に数えられるナデシコは、古くから日本各地に自生するカワラナデシコ(河原撫子)とされています。大和撫子とはそもそもこの花の別称で、清楚で美しく、しとやかに咲く姿には和の趣が感じられ、茶花としても古くから親しまれています。
そういえば、サッカー日本女子代表チームの愛称も大和撫子にちなみ「なでしこジャパン」でしたね。園芸店に流通しているナデシコは海外種との交配種が多く、花色も豊富に揃って華やかな印象ですが、カワラナデシコは透明感のある花色で、深い切れ込みの入る花弁がとても繊細な印象です。名前のとおり河原などによく自生しているので、河原を散歩すれば、この時期なら咲いている姿に出会えるかもしれません。
栽培の難易度
日当たりがよく風通しのよい環境を好みます。河原によく自生するように、砂利混じりの水はけのよい土壌を好みます。花は6月から咲き始めるので、終わった花がらを摘み取り、草丈が高くなってきたら夏前に一度株元近くで切り戻すことも可能です。ナデシコの中には耐寒性が弱いため、一年草扱いされる種類もありますが、カワラナデシコは耐寒性が強く、冬越しも比較的容易にできます。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。