365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
一覧はこちら>> 秋バラ〜その1
白に淡い覆輪が入るかわいらしいバラ‘マチルダ’は、秋にはピンクがここまで濃くなるものもあります。フロリバンダの木立ち性です。■属科・タイプ:バラ科の落葉低木
■花期:10月〜11月(見頃の時期)
花1輪の際立つ美しさに惚れ惚れ
ちょうど秋バラが見頃の時期を迎えています。各地のバラ園に行けば多くの品種が見られますが、散歩道でも美しく咲いている秋バラをよく見かけます。そもそも秋バラとはどんなバラか、まずは紹介します。
バラは咲く時期によって大きく3つのタイプに分かれます。4月中旬から6月までの間、年に1度だけ開花するのが一季咲きで、原種のバラやオールドローズと呼ばれる古い品種の多くがこのタイプです。基本的には一季咲きではあるものの、夏から秋にかけても不規則にちらちらと花を咲かせるのが返り咲きです。
そして、気温が15℃以上であるなどの条件がそろえば、どの季節でも繰り返し花を咲かせるのが、四季咲きです。10月〜11月に見頃となる四季咲きをメインに、返り咲きの品種も少し加ったものを秋バラと呼んでいます。
秋バラの醍醐味を堪能できるのが黒バラ。黒バラとは、黒みがかった赤バラのことをいいますが、秋にはその黒みが一段と増します。これは 黒バラの代表品種の一つ‘パパメイアン’。四季咲きタイプのハイブリッドティーで、フランスのメイアン社の作出。春〜初夏にかけてのバラは、冬の間に休眠して蓄えたエネルギーを使って一気に咲くので、花数も多く、花のサイズも大きめになります。長く伸長したつるバラやボリュームたっぷりに花をつけたシュラブローズが生み出す美しい景色はその時期ならではの魅力です。
一方、暑い夏を経験したのち、気温が下がり始めた頃に蕾を作る秋バラは、花サイズがやや小ぶりになり、花数も少なめです。ただし、花色がぐっと濃くなる傾向があり、気温が低めなので、花形が乱れずに長もちします。春〜初夏のバラのような圧倒的なボリューム感はないものの、秋バラには花1輪の美しさをじっくり堪能できる魅力があります。
私はバラ愛好家というわけではありませんが、秋バラにはどことなくロマンチックな雰囲気が感じられ、散歩道で出会うのを楽しみにしています。たった1輪でも、凜と咲く気品ある花姿には圧倒的な美しさが感じられ、やはりバラは花の女王なのだなぁと、毎年納得させられています。
下のMEMOでご紹介する写真はすべて秋に撮影したものです。春〜初夏の花色や花形と多少異なるものもありますが、その違いこそ秋バラの魅力です。
栽培の難易度
バラの苗木は、9月〜12月に販売される大苗と、春に販売される新苗があります。この時期に販売されているのは、新苗をこの時期まで畑で栽培した大苗です。ある程度成長しているので、植え替えによる傷みの心配も少なくてすみます。秋の大苗は主枝が1本くらい伸びているだけですが、冬の休眠期に庭や大鉢に植えつけておくと、春から新芽が動き出します。日当たり、風通しがよい場所で、水はけがよく肥沃な土壌を好みます。植えつけ時に元肥を施し、たっぷりと水やりします。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。