365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
一覧はこちら>> 花がもつ本来の美しさを表現できる天気とは?
本日はこの時期に出会える花のご紹介ではなく、花の写真をより上手に撮るためのノウハウを紹介します。花の種類が少なくなるこの時期に、ぜひ撮影スキルをアップし、花がたくさん咲き出す季節に備えてください。
花やガーデンの撮影のポイントを、この連載の写真を撮影してくださっているカメラマンの横田秀樹さんに教えていただきました。
カメラマンの横田さん撮影のつるバラ‘サンセットグロウ’。砂漠のオアシスにある湖を染める夕焼けの色にインスパイアされたことから生み出された花色は、明るい曇りの日に撮影することで本来の花色をそのまま表現できました。花の写真をきれいに撮りたければ、まずは撮影するお天気を選ぶことが重要なのだそうです。よく晴れた日は散歩に出かけたくなりますが、必ずしも晴れた日=撮影日和ではありません。
直射日光が強いと陰影が生まれ、影の部分は黒くなりすぎ、光が当たっている部分は明るくなりすぎて色が飛んでしまうのです。色が飛ぶというのは、本来の色より浅くなってしまうこと。また、光と影の強弱が強くなりすぎるため、花本来の美しい表情が表現しにくくなることもあるそうです。
では、横田さんが花の撮影にあたり、どんな天気を選んでいるかというと、明るい曇りだそうです。明るい曇りでは花色も美しく表現でき、適度なメリハリがある写真が撮れます。
また、明るさが安定しているので、焦らずにじっくり撮影できるのです。晴れ、時々曇りの日でも、雲が日差しを遮るタイミングを待てば、きれいな花色に映ります。
さらにブレを防ぐためには、風がない日、もしくは弱い日を選ぶことも大切。そのため、天気予報では風の強さにも注意を払っているそうです。
横田さん撮影のイングリッシュローズ‘スカイラーク’。後ろの空の色で曇り具合がわかると思います。花弁の重なり部分が暗く沈まず、濃淡ピンクのグラデーションがきれいに撮れています。仕事や買い物の行き帰りで、きれいに咲いている花を見かけると、スマートフォンでささっと撮影することの多い私ですが、見直すと「こんなはずじゃなかったー」とがっくりすることもたびたびです。
横田さんも常に一眼レフを持ち歩いているわけではないだろう、と伺うと、「見つけた花はとりあえずスマホで撮っておきます。そのうえで、花がどれくらい持つか、また蕾だったらあとどれくらいで咲くかを考え、ベストなお天気の日を選び、今度は一眼レフをもって訪ねます」というお答え。
同じ花のもとを何度も訪ねる、その時間のかけ方がプロであり、きれいな写真を撮るポイントなのだと感じました。
そんなプロのカメラマンでも「これはかなわないなー」と思う写真があるそうです。それはガーデンを管理しているガーデナーさんが撮る写真。毎日花の様子をチェックし、いちばんきれいなタイミングで、天気や時間帯を選んで撮影しているからだそうです。
MEMOで横田さんの写真と私が撮影した写真を紹介しますので、見比べてみてください。
高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。