徳島県の伝統産業で、昭和51年には国の伝統的工芸品に指定された「阿波和紙」。「流し漉き」や「溜め漉き」といった伝統的な技法で作られた和紙は、独特の光沢と水に強く破れにくいのが特徴です。その歴史は古く、奈良時代に忌部(いんべ)氏が麻や楮(こうぞ)を植えて紙を製造し、朝廷に献上したという記録が残っています。
藍染めの技術を継ぐ染師・藤森美恵子氏が手染めした藍染和紙の一例(「波形染め」5000円)。
時代は移り天正13年、初代徳島藩主・蜂須賀家政が楮(製紙業)を保護し、さらに2代藩主・至鎮(よししげ)が、農家の副業として紙作りを奨励するなど、藩の政策として製紙業を盛り上げました。その後、紙の需要の増加にともない、明治期には全盛期を迎えますが、第二次世界大戦後は西洋化の流れとともに徐々に衰退、廃業していきました。
しかし、唯一残った紙漉き業者である藤森家が阿波和紙の伝統を守り続け、富士製紙企業組合を創立。手漉きの技術を継承すると同時に、機械の導入によりインクジェット印刷用や壁紙など、現代の生活に合う製品を開発してきました。
高品質の阿波和紙を日常で楽しめるよう新しく開発された「suaika桐箱入りレターセット」(2万円)。藍染めのほか墨染め、柿渋の3色で構成され、B5便箋(各色10枚、計30枚)と封筒(各色5枚、計15枚)がセットに。
そして徳島ならではの和紙として、先代・藤森 実氏が推進したのが「藍染和紙」です。江戸時代には「藍といえば阿波」といわれるほど、藍染めの原料となる「すくも」栽培の本場として栄えていた吉野川周辺地域。その阿波藍を使い、絶妙なグラデーションやぼかしを可能にした貴重な技術は、国内外で注目を集めました。