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クルーズ黄金時代の伝統と格式を受け継ぐ大型客船「クイーン・エリザベス」で旅へ>>品格あるフォトジェニックな施設の数々を巡る
クイーン・エリザベスの船内は、アールデコを基調に、往年の豪華客船のノスタルジックな意匠を残しながらも、上質で現代的な造りです。
まず訪れたいのが、ロイヤル・アーケードにある曲線が美しい階段。ロンドンのビッグベンを制作したデント社製の時計があり、定時になるとビッグベンと同じ、耳に心地よい鐘の音が鳴り出します。ガラディナーの日に撮影会も行われる人気のフォトスポットです。
時計盤には「DENT」と「CUNARD」のロゴ、そして船の就航年である「2010」の文字が。グランド・ロビーで目を引くのは、階段の踊り場にある寄木細工の壁アート。初代クイーン・エリザベスをモデルにしたアートで、故英国女王エリザベス2世の甥にあたるデイビッド・リンリー(第2代スノードン伯爵)の手による作品です。
踊り場の正面に鎮座する、アールデコ調の壮麗な寄木細工のアート。女王の肖像画が飾られているコーナーもあり、カメラを向ける人も多くいました。
故英国女王エリザベス2世の肖像画。思わず足が止まる。乗船中、一度は訪れたいのが、らせん階段を設けた2階建てのライブラリー。約6000冊もの蔵書を備え、日本語の本も置かれています。司書が常駐して本の貸し出しを行っているので、気になる本を船室に持ち帰ってゆっくり読めるシステム。
大きな地球儀は初代クイーン・エリザベス時代のもの。船内にあるとは思えないほど壮観な造りと充実の蔵書に、クイーン・エリザベスの船客の知的好奇心の高さがうかがいしれます。
さらに英国王室や船の歴史に興味があれば、「キュナード・プレイス」もおすすめ。1840年にサー・サミュエル・キュナードがハリファックス経由でリバプールからボストンを結ぶ定期航路に「ブリタニア」を就航させて以来、現代までの歴史がぎゅっと詰まった博物館のようなエリアも設けられています。
英国スタイルの美食と美酒を存分に楽しんで
船室カテゴリーにより決められているメインダイニングは、「クイーンズ・グリル」「プリンセス・グリル」「ブリタニア・クラブ」「ブリタニア・レストラン」の4か所。プリフィクス・スタイルで好きなメニューを選びます。
ウエイターと相談の上、前菜を2つだけなど、好みでアレンジすることも可能です。グリル・クラスであれば、メニューの数も多く、さらに豊かな食体験をわがままに堪能できます。
ファインダイニングの雰囲気の中、朝昼晩と利用できる「クイーンズ・グリル」。ワインセレクションも充実。「ブリタニア・レストラン」は、2層吹き抜けの壮大な造り。メインダイニング以外のレストランやバーなどは、船室カテゴリーにかかわらず、どなたでも利用できます。「リド・レストラン」は、早朝から深夜まで利用できるビュッフェレストラン。日本周遊クルーズの際には、寿司やみそ汁などの日本食も並ぶそう。予約制スペシャリティレストラン「ステーキハウス・アット・ザ・ベランダ」では、熟成肉のステーキやロブスターなどを召し上がれ。
デッキ10の船首にある「コモドアー・クラブ」は、眺望抜群のラウンジ。コモドアー(提督)とは、船長の中から選ばれる最高位の称号のことで、ここでは、歴代のコモドアーをイメージしたシグネチャーカクテルを楽しめます。
大海原を望む広々としたラウンジ「コモドアー・クラブ」。アルコール以外の飲み物や軽食なども提供。夜は、ジャズの生演奏も素敵。かの有名なタイタニックが沈没した際に生存者を救助したのは、キュナードが運航する船「カルパチア」。カルパチアの船長を務めたコモドアー・サー・アーサー・ロストロンをイメージしたカクテルは、卵のリキュール「アドヴォカート」を用いたほんのりと甘く、懐かしい味わいです。
ロストロン船長をイメージしたカクテル『パンチ・ロメーヌ・ア・ラ・カルパチア PUNCH ROMAINE Á LA CARPATHIA』。メニューには各提督のストーリーも載っている。パブ「ゴールデン・ライオン」は、昼から夜までいつもゲストが集っていて賑やかな雰囲気。ここではキュナードオリジナルの3種のビールを、タップから生で味わえるのが大人気です。
パブ「ゴールデン・ライオン」。フィッシュアンドチップスやチキンティッカマサラなどのメニューもあり、まさに英国のパブの雰囲気そのもの。船上で楽しむ優雅な正統派アフタヌーンティー
クイーン・エリザベスの名物ともいえるのが、優雅なクイーンズ・ルームで毎日開催されるアフタヌーンティー。エレガントなフィンガーサンドイッチが数種、定番のスコーン、最後にスイーツやチョコレートなどが、白手袋のスタッフからサーブされます。
もちろん、紅茶は「トワイニング」、スコーンに添えられるジャムは「チップトリー」。英国のマナーハウスでおしゃべりしているような気分になります。
白手袋を着けたスタッフが、スコーンや紅茶をサーブしてくれる。スコーンは、外はカリッと中はしっとりした絶妙なおいしさ! 会場では生演奏も。船上で提供される料理やカクテル、アフタヌーンティーなど、どれももちろんおいしいのですが、その背後やディテールに、英国ならではの物語やこだわりがたくさん詰まっているのがたまらない魅力。クイーン・エリザベスは、まるで“世界の洋上を移動する英国”です。
次回は、観劇、ダンスからフェンシングまで、豊富なアクティビティをご紹介します(3月10日記事公開予定)。どうぞお楽しみに!