一度は訪れてみたい憧れのホテル「アマン」は、その土地ごとに個性あるリゾートを展開してきました。アジア各地とヨーロッパにある5軒を新規取材、その魅力を解き明かします。(
前回の、個性溢れるアマンをめぐる第2回はこちらから。)
上海郊外の10ヘクタール、3万250坪の敷地に広がるアマンヤンユン。中庭では、樹齢約1000年の楠“皇帝の樹”と、築400年の伝統家屋を生かした“楠書房”を望むことができる。モダン&伝統的な建築を木、石、水で調和させて
アマンヤンユン(中国・上海)
2018年1月のプレオープンから約3か月半が過ぎた4月28日。上海郊外にて「アマンヤンユン」がグランドオープンし、その歴史が幕を開けました。中国では北京、麗江、杭州に次ぐ、4軒目のアマンです。
魅力なのはその利便性。例えば成田空港から上海浦東(シャンハイプードン)空港までの飛行時間は約3時間から3時間半。上海浦東空港からホテルまでは車で小一時間なので、成田空港を離陸してから4〜5時間後にはアマンヤンユンでの滞在をスタートできることになります。
端正でモダンなエントランス。広大な敷地には13棟のアンティーク ヴィラと12棟のアマン レジデンス、ミン(明)コートヤード スイート24室、カルチャーサロン〝楠書房〞、アマン・スパ、レストラン3軒と2つのバー、プライベートシアターなどが点在。急激な発展を遂げ、今や中国有数の国際都市となった上海。この地にアマンヤンユンがなぜ建てられることになったのか。
今から16年前、 “皇帝の樹”と呼ばれる樹齢約1000年の楠と、400年前の伝統家屋の移築計画から、アマンヤンユンの物語は始まりました。
上海からおよそ700キロ離れた江西省撫州市。明・清朝時代に建てられた伝統家屋や楠の森を有する村が、貯水池の建設に伴い、水の底に沈む危機に瀕していることを知り、未来に引き継ぐべき遺産として保護する決意をしたのが、その村で生まれ育った起業家のマ・ダードン氏でした。
壮大なアマンヤンユンプロジェクトを立案し実行に移した江西省出身の起業家、マ・ダードン氏。「16年懸けた夢が遂に形になり、感無量です。27歳だったから、村ごとの移築というクレイジーな計画に着手することができました。43歳の今の私なら絶対にしません(笑)」と大変さを笑いに変え、これまでの道のりを語ってくれた。アマンとともにプロジェクトチームを結成し、伝統家屋の解体と手作業による移築再建、楠を含む約1万本もの木々を輸送して自生させることに成功。
アマン東京やアマネム(三重県)のデザイン設計も担当した「ケリー・ヒル・アーキテクツ」により、400年の歴史を持つ村が、快適性と最高のホスピタリティを融合させたアマンヤンユンとして生まれ変わりました。
木の温もりに包まれたロビー。アンティーク ヴィラ「No.6」のベッドルーム。