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藤田美術館を愛する3人が語るその魅力とは?誰もいない展示室で特別な鑑賞会!

2019.04.15

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展示室2階で、四天王像増長天と対峙する藤田 清館長四天王像 鎌倉時代/展示室2階で、四天王像増長天と対峙する藤田 清館長。旧展示室は藤田邸の蔵として明治後期に建てられた

リニューアルのため、2017年6月に一時閉館した藤田美術館。今回は建て替えを待つばかりの旧展示室で、『家庭画報』本誌のためだけに特別に行われた最後の誌上展覧会の模様をお届けします。

旧展示室 最後の誌上展覧会


誰もいない展示室で名品を存分に堪能する


2017年6月に一般公開を終えた静かな展示室に集まったのは、千 宗屋さんと戸田貴士さん、そして藤田 清館長


幼少の頃から藤田美術館に通っていたという千さん、春秋の展覧会の際には作品の搬出入を担っていた戸田さんと藤田館長で、好きな作品を並べて心ゆくまで鑑賞しようという趣向です。

三家は、藤田美術館の礎を築いた藤田傳三郎が武者小路千家十一代一指斎宗匠にお茶を習い、お茶道具をほぼすべて谷松屋戸田商店から購入していたという、明治時代からのおつきあい。

蔵の美術館として親しまれてきた展示室最後の、誌上展覧会が始まります。

「本来は裏絵だったためか、平安時代の色彩が鮮やかに残っています」―藤田


国宝 両部大経感得図

国宝 両部大経感得図(りょうぶだいきょうかんとくず)
藤原宗弘 筆 保延2(1136)年。密教で重要な2つの経典、大日経(右)と金剛頂経(左)を両部といい、それらを手に入れた際の物語が描かれている。平安時代のやまと絵で、筆者と制作年まで判明している貴重な作品。


藤田 清さん(以下藤田) 今日は誰もいないので、展示ケースに上がって近くでじっくりご覧ください。

千 宗屋さん(以下千) 《両部大経感得図》は何度か拝見していますが、こんなに近くで観るのは初めてです。

戸田貴士さん(以下戸田) 平安時代のものとは思えないほど、色が鮮やかですね。

藤田 お寺の須弥壇の建具として使われていたもので、この絵は、本来は裏なのです。表には密教の曼荼羅が描かれているのですが、そちらは実用として新しく描き直された江戸時代のもの。裏だったからこそ、光もあまり当たらず、保存状態がよかったのでしょうね。

戸田 伝来はわかっているのですか?

藤田 明治時代に廃寺となった奈良の永久寺から来ています。

国宝 両部大経感得図 金剛頂経

国宝 両部大経感得図 金剛頂経

 密教の重要な2つのお経が得られたときの様子が描かれているのですよね。左は、インドの僧、龍猛(りゅうみょう)が『金剛頂経』を得るために訪れた塔で守護神と対峙している場面。

藤田 お経を唱えながら7日間塔の周りを廻り、やっと入塔を許されますが、経典を持って外に出ることも、書き写すことも禁じられて、丸暗記して出てくるという物語です。

戸田 守護神の目の迫力がすごいですね。

国宝 両部大経感得図 大日経

国宝 両部大経感得図 大日経

藤田 右は、インドの僧、善無畏(ぜんむい)が祈ったところ、大日経念誦(だいにちきょうねんじゅ)供養法が空に現れた、という場面です。

 筆者の藤原宗弘(ふじわらのむねひろ)は、行ったことのないインドを、想像で細密に描いている。仏画であり、説話画であり、風景画でもあるという、観れば観るほど、新しい発見がある貴重な絵です。
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