名産地で味わう&家庭で作る“はまぐり”──究極の美味と出会う 最終回(全3回) 夫婦和合の象徴としてひな祭りにいただくことの多いはまぐりですが、その旬は初夏まで続きます。江戸時代より名産地として知られる三重・桑名、国内で最も漁獲量の多い千葉・九十九里浜などを訪ねました。この貝をこよなく愛する“はまぐりびと”にはまぐりに懸ける想いをうかがいながらその美味を引き出した料理と、家庭でもできるシンプルなレシピを習います。
前回の記事はこちら>> ※以下の記事は、『家庭画報』2020年6月号取材当時の情報です。営業時間等は変更となっている場合もありますので、最新の営業状況等はお店の公式ホームページ、またはお電話等でお確かめください。 【九十九里浜~鹿島灘】
太平洋の荒波にもまれて育つ外洋性のはまぐり
千葉県旭市の沖合で操業する海匝(かいそう)漁業協同組合所属の漁船。網に入ったはまぐりを揚げている様子が見える。1艘の船に漁師が6〜7人乗り組み、1回の水揚げ量は1トンほど。売り上げは均等に配分される。千葉県、茨城県の太平洋沿岸では、日本で最も多くのはまぐりが水揚げされています。数十キロ続く長い砂浜の水深5メートルまでのところに生息するのは、外洋性のチョウセンハマグリ。
茨城県の大洗から波崎にかけてとれる大型の“鹿島灘はまぐり”は、多くの江戸前ずしの名店で煮はまぐりの握りに使われています。
鹿島灘産の中でも特に大型のはまぐりと、九十九里浜産の3〜4年もののはまぐり。かつては茨城県が多くの漁獲量を誇っていましたが、平成20年代半ばを境に漸減し、逆に千葉県の漁獲量が急激に増えています。
朝6時過ぎ、千葉県九十九里浜の沖合約100メートルで漁船が14艘ほど、鉄製のかごで砂を搔きながらはまぐりをとる光景が見られます。
飯岡漁港にある海匝漁協地方卸売市場に漁船から直接水揚げされたはまぐりは40キロ入りの白い袋に入れられ、漁をした船団ごとに競りにかけられる。「漁に出るのは週2回ほど。約2時間操業して1回の水揚げが全体で15〜16トン。稚貝放流もしていますが、自然発生する天然もののほうが多いですね」と漁師・仲買人の鈴木進一さん。
地のはまぐりはほとんどが豊洲市場に送られますが、地元では海沿いにある食堂で、焼きはまぐりを気軽に味わうこともできます。
はまぐりびと(6)
漁師・「ボウヨ水産」2代目主人
鈴木進一さんはまぐり歴:39年。漁師で仲買人の資格を持つのは海匝漁協で1人だけ。
好きなはまぐり料理:焼きはまぐり。醬油をたらしたときの匂いが最高! 子どもの頃は海岸で焚き火をして焼いた。
はまぐりへの想い:息子が実家に戻り、後継者ができてほっとしている。大好きなはまぐりを今後も皆さまにお届けしていきたい。