い草、紅葉、菜の花、紅花、紫陽花の5種類の草花がすき込まれた「すき込み封筒」1100円。すかしの罫線が入った12枚綴りの「ちぎり便箋」1100円。一般的な和紙の原料として知られる楮(こうぞ)ではなく、梶の木を使って和紙を作る、佐賀県の工房「名尾手すき和紙」。
梶の木の栽培から、すべての作業を自社で行っています。
梶の木の葉は短い毛で覆われているため文字が書きやすく、平安時代に文(ふみ)を送るために使用されたことから、「はがき(葉書)」という呼び名が生まれたといわれている。長い繊維を持つ梶の木は、繊維同士が絡み合い、薄さと強度が両立した和紙に仕上がります。
そのため古くは障子や提灯など、光を通す薄さを持ちながら、耐久性が必要な製品に使用されてきましたが、この度その性質を生かして新たに誕生したのが「LETTERS」シリーズ。
四季折々の草花をすき込んだ封筒や、和紙の毛羽立ちが美しいちぎりの便箋や一筆箋が揃います。
20枚綴りの「ちぎり一筆箋」1100円定番商品の色吹き染めの扇子は、でき上がった和紙に顔料を吹きつける「後染め」の技法を使用。
約25年前、全国でいち早く和紙の染色を始めた名尾手すき和紙ならではの、霞のように柔らかなグラデーションが美しい一品です。
通常の布貼り扇子の約半分の軽さである「扇子 色吹き染め ピンク」3850円。カラーや染めのバリエーションも多数。手すき和紙はその作る手間と貴重さから文化財修復にも重宝され、ユネスコ無形文化遺産である「唐津くんち」の復興プロジェクトでも使用されました。
唐津くんちの7番曳山「飛龍」の修復に使用する和紙を製作。11月2日~4日のお祭りの期間以外は、唐津神社の西隣にある「曳山展示場」に展示されている。7代目の谷口 弦さんは「機械すきが主流となった現代だからこそ、手すきの強みを生かしていきたい」と語ります。
「唐津くんちの復興作業を行ったとき、主催者のかたから『次の修復は100年後、そのときもよろしく』とお声掛けいただきました。文化財の修復も、大切な人に贈る手紙も、“人の思いを後世に伝える”という点が共通しています。和紙はそれができる特別なツールだと思っています」。
剝いだ梶の木の皮を干す“皮干し”の期間はひと月ほど和紙は1枚ずつ職人が手すきで作り上げる。長い繊維がダマにならないよう、すばやく動かす。