旬を愛でる花旅・庭めぐり(18)
スノードロップの咲く庭で優雅なひとときを 〜神奈川・石窯ガーデンテラス
ガーデニングエディターの高梨さゆみです。毎週更新の花と庭を愛でる旅情報、今回は春の訪れをいち早く告げるスノードロップの隠れた名所をご案内します。花を愛でるだけでなく、優雅な時間を過ごせる素敵なテラスレストランです。
【連載】旬を愛でる花旅 ・庭めぐり 12月-1月の花の名所
[第15回]真冬に咲くクレマチスをご存じですか?[第16回] 太平洋に浮かんでいるよう。不思議なチューリップの景色を見に初花詣でへ[第17回]新春、エレガントなアザレアに出会う。生産量日本一の県とは?→花の名所をもっと見る鎌倉の浄妙寺の敷地内にある「石窯ガーデンテラス」。歴史ある洋館はドイツ人によって設計され、貴族院議員の自宅として使用されていたもの。 写真/横田秀樹 鎌倉の由緒あるお寺の敷地内に違和感なく溶け込むイングリッシュガーデン
1188年(文治4)に建立された浄妙寺は、鎌倉五山の一つで足利家ゆかりの由緒あるお寺です。このお寺の一角に、歴史ある洋館があり、そこに素敵なイングリッシュガーデンがあることをご存じでしょうか。
山門を入ると、正面には山を背景に立派な本堂があり、左手には枯山水の庭をもつ「喜泉庵」があります。その上を左にずっと上がって行くと、こぢんまりした2階建ての洋館が見えてきます。この洋館は1922年(大正12)にドイツ人の設計により建てられたもので、当時の貴族院議員が住まいとして使っていたものだそうです。
その後、長らく使われないままになっていたのですが、何かよい利用法はないかと悩んだ住職ご夫妻が出した答えが、庭を見ながら食事ができるテラスレストラン「石窯ガーデンテラス」でした。
洋館の前に広がる庭は、フジやウメ、ツツジやアジサイ、ツバキなどが咲く純和風の庭園。そこで洋館の雰囲気に合わせて洋風にリニューアルされました。そのデザインや植栽の管理を任されたのは、スコットランドから来日して17年になるガーデンデザイナーのニコラス・レナハンさん。
じつは仕事の関係で、何度もこの庭に通っているのですが、いつ行っても旬の花が咲き、心落ち着く美しい景色に魅了されます。ニコラスさんの植物に対する細やかな愛情と豊富な知識から生まれた、ニコラス流イングリッシュガーデンは、お寺の中にあっても違和感を感じさせることなく、まるで自分の家の庭を巡っているような温かな気持ちが沸いてきて、帰りがたくなる居心地のよさを感じさせてくれます。
さて、一年中でいちばん寒さが厳しくなるこの時期にも、「石窯ガーデンテラス」には愛らしい花が咲いています。真っ白な花を下向きに咲かせるスノードロップ。まだまだ寒いけれど、春は確実に近づいていることを知らせてくれる愛すべき妖精です。