365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
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ラッパズイセンなどは草丈が50cmくらいになるので、草丈が高くなっても20cmくらいの‘テータテート’は、まさにミニサイズ。その小さな姿がまた魅力的で世界中で愛されている品種です。■属科・タイプ:ヒガンバナ科の秋植え球根
■花期:2月〜4月
■草丈:10〜20cm
誕生から70年以上たつ現在でも世界中で愛されています
スイセンの早咲き品種が咲き始めていますね。なかでも開花が早いのがミニスイセンの代名詞的存在の‘テータテート’です。
草丈は高くなっても20cmほど、花も小さめサイズですが、花の少ないこの時期は輝くように鮮やかな黄色の花がよく目立ち、地面をパッと明るくしてくれます。‘テータテート’が咲き始めると、これから魅力的なスイセンの季節がやってくる、とうきうきした気分になります。
1950年から英国王立園芸協会(The Royal Horticultural Society)がスイセンの品種登録を認定・管理するようになりましたが、登録された園芸品種はすでに2万種以上といわれています。
それらは、ラッパズイセン、大カップスイセン、八重咲きスイセン、タゼッタ(房咲き)スイセンなど、花の特徴により12区分に系統分けされていますが、‘テータテート’は、第12区分のその他に分類されています。1〜11の区分のいずれにも属さない園芸品種ということです。
1949年にはすでに誕生していた歴史ある園芸品種で、世界中で広く愛されている‘テータテート’がその他の区分なのか、と意外に感じています。1本の花茎に複数の花がつくので、房咲きスイセンの性質が入っているのではないかとも思うのですが、調べてみると花粉親が自然受粉なので、系統分けにきっちりとはまらないのかもしれません。
また、品種名の‘テータテート’=Tate a teteは、育種者の名にちなんでいるそうですが、フランス語のtête-à-têteが内緒話の意味もあり、いくつかの花が顔をつき合わせて咲く様子が内緒話をしているさまにも見え、名前にぴったりのイメージと感じている人も多くいて、それが由来なのではないかという説まで流れています。
ここでは古くから呼ばれている‘テータテート’としましたが、最近ではテタテタ、ティタティタ、チタチタなど、さまざまな読み方の名前で出回っています。
散歩道でも何か所かで咲いているのを見つけることができるかわいらしいミニスイセンが、誕生から70年過ぎても世界中で愛されていると知ると、育てやすく、本当にすばらしい品種なのだとあらためて実感します。
スイセン‘テータテート’とパンジーの花合わせ。黄色×青紫の対比が、互いの花色をより強く引き立てます。栽培の難易度
球根の植えつけ適期は10月〜11月。日当たりがよくも水はけのよい土壌に植えつけます。植えつける深さは球根3球分が目安で、必ず芽の出るほうを上に向けます。植えつけ時に元肥を施せば、追肥の必要はありません。地植えの場合は水やりは雨まかせでかまいませんが、からからに乾燥しているときはたっぷりとやります。花が終わったら花茎の根元から切り取り、葉は枯れるまでそのままにしておきます。植えっぱなしで数年楽しめ、分球して自然に増えます。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。