旬を愛でる花旅・庭めぐりとは…毎週水曜日は、ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが“今が旬”の花の名所情報をお届け。今回は早めに旬を迎えた素敵なバラの庭をご紹介します。
旬を愛でる花旅・庭めぐり(34)愛らしいバラの庭で心華やぐ〜愛知・ガーデニングミュージアム 花遊庭
「ガーデニングミュージアム 花遊庭」の出口にある門からチャペルハウスにバラが絡まり咲く景色はナチュラルで愛らしく、そのまま自宅に持ち帰りたくなる。写真/横田秀樹大規模なバラ園で感嘆する? それとも愛らしいバラの庭で心華やぐ?
バラのシーズンがやってきました。今年はサクラの早い開花に始まり、バラの開花も早まっているので、旬を見逃さないよう早めにバラを愛でる旅にお出かけください。
「日本人は本当にバラが好きなんだね。僕だったらこんなに蒸し暑い気候でバラを育てようなんて考えないよ」
知り合いのイギリス人ガーデナーにこう言われました。バラは元来冷涼な気候を好む性質。日本の初夏から夏の蒸し暑い気候では、管理の手間がとてもかかるのです。
それでも、日本にはイギリスよりはるかに多くのバラ園があり、個人邸の庭でバラを育てている方もたくさんいらっしゃいます。
イギリス人の彼が言うように、日本人は本当にバラが好きで、バラに注ぐ情熱も世界に誇れるものだと思います。
コテージに絡まるつるバラ‘ローブリッター’は、キュートなピンクでころんとした花形が本当に愛らしい。写真/横田秀樹さて、日本全国に見に行きたいバラ園はたくさんあります。
できるだけたくさんの種類、株数を見たいなら、岐阜にある「花フェスタ記念公園」が日本最大級。
原種、オールドローズから世界最新品種まで、約7000品種、3万株のバラが咲き誇る景色は本当にゴージャス。5月12日〜6月17日まで「春のバラまつり」を開催中です。
関東エリアなら千葉の「京成バラ園」、「神奈川県立花と緑のふれあいセンター 花菜ガーデン」、関西では兵庫の「荒牧バラ公園」、さらに九州では「ハウステンボス」なども充実のボリューム感が楽しめます。
さて、数あるバラ園の中で今回取り上げるのは、規模が大きなバラ園にはない、愛らしい魅力を持つ庭です。
愛知県豊田市にある「ガーデニングミュージアム 花遊庭」。この連載でも何度かご紹介した28のテーマガーデンを持つ庭で、NHK『趣味の園芸』の講師としてもおなじみの天野麻里絵さんが、植栽とメンテナンスを担当しています。
1300坪の敷地に点在するスモールガーデンのいたるところで、いまバラが誇らしげに花を咲かせています。
味わいのあるコテージに絡まるバラと、その前に広がる庭に咲くジギタリスやデルフィニウム。花形や花色の対比からより美しさが際立つ。きちんと計算された植栽が生み出すナチュラルな景観。写真/横田秀樹バラと季節の花が生み出すナチュラルな景色が素晴らしい
「ガーデニングミュージアム 花遊庭」の目的のひとつは、庭づくりの参考になるような、しゃれたサンプルガーデンであること。
そのため、庭にしつらえたコテージ(田舎家)やコンサバトリーなどの建造物も、実際に自宅の庭に設置可能な身近なサイズ感です。
小径のレンガなども実際に使用したときの雰囲気がわかるようさまざまな素材が使われています。時間を経た味わいのある建物や小径を背景に咲くバラの、何とも美しいこと!
バラそのものも十分美しいのですが、それが景色となったとき、何がいちばん心に響くかといえば、やはりナチュラルであることだと私は思います。
そのナチュラルな美しさを生み出すのが、天野さんの素晴らしい植栽センスです。
素朴な田舎家の前に広がるコテージガーデンでは、バラと同時期に咲く花々のコラボレーションが1枚の絵のように美しい光景を生み出しています。
コテージに絡まるつるバラ、その前にはすっくと立ち上がるジギタリスやデルフィニウム。
丸いバラの花とスマートな花姿のジギタリスとの花形の対比は、庭の景色に変化をもたらし、またバラの花色にないブルー系のデルフィニウムを加えることで、色のコントラストが強くなり、互いを引き立て合う効果があります。
そして、庭の地面を隠すように群れ咲く幾種もの宿根草や一年草。美しいナチュラルな景色はきちんと計算された植栽計画から生まれることを痛感させられます。
庭の奥には、ハイブリッドティーやイングリッシュローズを集めた整形式のローズガーデンがあります。
ツゲなどの低い生け垣で仕切られた中にバラを植える、ヨーロッパの伝統的なガーデンですが、規模が小さくとても愛らしい印象で、1種1種のバラをじっくり愛でるには最適のガーデンです。
小さいながらも伝統的な整形式ローズガーデンもある。規模の大きなものだとフォーマルな印象が強すぎて身近に感じられないが、このサイズ感だと整形式のガーデンも愛らしく、自宅の庭でも試してみたくなる。写真/横田秀樹「玖島ローズ」とコラボのローズランチで優雅な時間を
出口にあるレンガ造りのバイブリーハウスも、バラとクレマチスが絡まって咲くこの時期は一段とロマンチック。
外から見ると、大人気のバラ‘ピエール・ド・ロンサール’が溢れんばかりに咲き、近寄ると幾重にも重なる花びらの、ピンクから白へのグラデーションの美しさに感嘆!
また、イングリッシュホワイトガーデンでは、白バラと白いジギタリス、イングリッシュデージーなどが清楚で気品のある景色を生み出しています。
ここには小さなチャペルがあり、ウエディングにも利用されます。花の中でのガーデンウエディング、この時期はとくに人気が高いそうです。
「ガーデニングミュージアム 花遊庭」では、5月31日まで「ローズフェア」を開催中です。
その期間にはゲストハウスで特別のランチが提供されます。
食べるバラの専門店として大人気の「玖島ローズ(KUSHIMAROSE)」とコラボした香り高いローズランチ。
バラを愛でたあとにバラを味わう、というちょっと贅沢な体験をぜひどうぞ。
5月31日までは「玖島ローズ」とコラボした「ローズランチ」が楽しめる。オードブル、スープ、メイン料理、デザート、ドリンクのコースで2400円。メイン料理を2品にすると2800円。ローズシロップやローズジャムなどを利用した香り高い創作料理をご賞味ください。※土曜・日曜は定休。(写真はイメージです。実際の料理とは異なります)さらに、5月27日まではGarden salon 「ここはなギャラリー」にて、「内藤マリナ水彩画展」も開催されています。
裏箔などを施した和紙に水彩絵の具で植物のディティールまでていねいに描く内藤さんの絵は、植物愛好家にとても人気があります。箔をまとった優雅で高貴なバラをぜひお楽しみください。
数ある花色の中で、日本人にいちばん好まれるのが白なのだそう。バラも白い品種は定番の人気。そんな白の花を集めたのが「イングリッシュホワイトガーデン」。ロマンチックな雰囲気を楽しみながら、鉢植えの上手な使い方をチェック。写真/横田秀樹ローズガーデンのパーゴラに絡ませたつるバラ‘アンジェ’は生育力旺盛で、外側から見ると溢れんばかりの見事な咲きっぷり。半八重のカップ咲きがとても愛らしい。強健で株元から花が咲き、長く楽しめる品種。写真/横田秀樹出口のチャペルハウスの壁面をバラとクレマチスが埋め尽くす。花期の合うバラとクレマチスを合わせるのがこの景色を生み出すポイント。