「心に響くイタリアの絶景」第4回(全7回) 初めてイタリアを訪れたとき、だれもが衝撃を受けたのではないでしょうか。栄華を誇ったローマ帝国時代からの歴史的建造物、ルネサンス発祥の地ならではの芸術文化、ダイナミックな自然とそこに共存する小さな村と人々の営み……。一度目にしたら忘れられない、ふたたび訪れることを思い願う、イタリアのとっておきの“絶景”へご案内します。
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マナローラ
ジェノヴァの東南約90キロにある世界遺産、チンクエ・テッレは、険しい海岸線に沿って並ぶ5つの小村の総称。なかでも最も美しいといわれているのがマナローラで人口わずか350人。近世に鉄道が開通するまで村へのアクセスは海路のみだった。海から見るその眺めも素晴らしいが、チンクエ・テッレ特有の段々畑を伝って高台に上がると村の全景が見渡せる。夕暮れ時にひとつふたつと民家に灯りがともり始めるその絶景は、胸を打つものがある。「美しい小さな村、そこに暮らす人の営みに興味があります」三上博史さん(俳優)20代の頃からドラマや映画の合間に世界中あちこち旅をして、気に入った街に住んだりしていました。友人を訪ねて行ったフィレンツェが初めてのイタリア。彼が所有するワイナリーのワインを飲み、フィレンツェ風ビステッカを食べた。いやぁ、今まで食べた中で一番おいしい肉だったなぁ。ロンドンに住んでいた時はディレクターと合流し、ポルトフィーノに行って。その時、「人の暮らしが大事だし興味がある」、という話をして、それが後に、『小さな村の物語』につながりました。
番組の中で印象に残っている絶景の街はマナローラ(写真)、アプリカーレ、モルヴェーノ。モルヴェーノの回は国立公園内で山荘をやっているおじいさんが主人公だったんだけど、2人の孫は息子夫婦が養子として迎えたネパール人で。とても可愛がっていて、毎朝山に薪を切りに出かける。いつも一緒。イタリアアルプスにネパールの男の子と女の子が暮らしているなんて普通ありえない。ある意味衝撃的だった。イタリア人の自由さ、懐の広さというか。イタリアは景色も美しいけれど、人が面白くて個性的。またイタリアの友人たちと再会できたらハグしたいですね。
三上 博史(俳優)東京都出身。1979年、『草迷宮』で映画デビュー。以降、映画、テレビ、舞台、音楽と幅広く活躍。近作に映画『モリのいる場所』、 ドラマ『集団左遷!!』。BS日テレ『小さな村の物語 イタリア』のナビゲーターを13年間務めている。
撮影・取材・文/池田匡克
『家庭画報』2020年11月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。