「“森林浴”は、私たちの心と体を健やかにしてくれることが、科学的に実証されています」
ー 宮崎良文(千葉大学環境健康フィールド科学センターグランドフェロー)「森林浴」は1982年、当時林野庁長官だった秋山智英氏により初めて使われた言葉で、日光浴や海水浴と同様、森の中に入り、歩き、五感を使って「森林環境を浴びる」ことで、健康・保養につなげようと提唱されたものです。
私たちは自然に触れると心身がリラックスすることを感覚的に知っています。それは人が人となってから700万年経過する中で、99・99パーセント以上の時間を自然環境下で過ごしてきており、人の体は自然対応用にできているからです。
長野県大町市にある小熊山林道の、初夏のミズナラの純林。5月上旬から中旬には新緑の芽吹きの中、ムラサキヤシオ、ムシカリ、オオヤマザクラなど、数多くの花が見られる。撮影/木原 浩そうした体を持ちながら現代の人工的につくられた都市社会を生きているため、人は覚醒しすぎた状態、ストレス状態になり、病気になりやすくなっているのです。森林浴を含む自然セラピーは、疾病を治療することはできませんが、病気になりにくくするという「予防医学的効果」を持っています。
森林浴の効果については、ここ20〜30年ほどの間に、脳活動や自律神経活動が計測できる機器が開発され、科学的研究データが蓄積されてきています。私の研究でも、以下のことが明らかになっています。
森林浴の効果1.森林部を歩くと、都市部を歩くよりも、リラックス時に高まるとされる副交感神経活動が活発になり、血圧や脈拍数が低下する。
2.森林浴プログラムを受けると、日常生活時と比較して血圧が低下し、ストレス時に高まる尿中アドレナリン濃度、血中コルチゾール濃度が低下する。