京都の醍醐味 第3回(全14回) 紅葉の美しい隠れ里の寺社、襲名展を控えた十六代樂 吉左衞門家、ラグジュアリーの中に伝統が息づく最新ホテル、伝統の味と新味が楽しめる料理店など、いつの日か訪れたい京都の“今”へご案内します。
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「亀屋則克(かめやのりかつ)」
デルスさんが通っていた当時、接客に当たったのは2代目の奥さま。今回ヤマザキマリさんが取材することをデルスさんに伝えたところ、「おばあさん、僕のこと覚えているかな?」とひと言。お客さまの間でも評判だった「看板娘」は現役を引退。現在は3代目の奥さま、森田洋子さんが伝統を受け継ぐ。「息子が感激したお店に念願叶って、私もようやく伺うことができました 」ヤマザキマリさん
「亀屋則克(かめやのりかつ)」とのご縁を語るうえで欠かせないのが、息子デルスさんの存在です。ハワイ大学に在学中、京都大学に留学。1年間を京都で過ごしました。
心配で様子を見に来ることもあったヤマザキさん。しかし京都まで足を運べないときは、デルスさんをおつかい役に。お目当ては「亀屋則克」を代表する夏の涼菓「浜土産(はまづと)」や、季節ごとに意匠を凝らした美しいお干菓子でした。
「初めてのおつかいの感想は『ママ、すごい店だったよ!』。店先に暖簾がかかるだけの戸を開けるには、さぞ勇気がいっただろうし、昔ながらの座売りの店でお菓子を注文するのも緊張の瞬間だったと思います。でも彼は、すごく感激して電話をかけてきた。ここは紛れもなく、京都というのは他とは一線を画す町なのだという特別な意識を、息子にもたらしてくれたお店の一つだと思います」
その後も定期的に指令を出して息子に送ってもらっていたご贔屓の和菓子を、今はもっぱらお取り寄せで入手。
「お店のかたも、ときどき現れるハーフの子を何だろう?って思っていらっしゃったでしょうね(笑)。ああ、私もようやく伺うことができました」
鮮やかな季節の彩りや豊かな秋の実りを写した上生菓子。常時6、7種類が店頭に並ぶ。お干菓子ともどもお取り寄せも可能。涼菓「浜土産」は5月〜9月の限定販売。
撮影/本誌・坂本正行 スタイリング/平澤雅佐恵 ヘア&メイク/田光一恵〈TRUE〉 取材・文/河合映江 ヤマザキさん衣装:ニット25万5200円 パンツ29万2600円/ともにロロ・ピアーナ(ロロ・ピアーナ ジャパン) ※営業時間や定休日は状況により変更になる場合があります。
『家庭画報』2021年11月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。