心癒やす温泉宿 第8回(全17回) 今、行くとしたら、どこの温泉宿なのか。温泉宿ウォッチャーの意見を伺いながら、これまでの湯宿取材と併せ、改めて真剣に考えてみました。
前回の記事はこちら>> やど紫苑亭(鳥取県 皆生〈かいけ〉温泉)
大山(だいせん)の水が潤す砂泥質の豊かな土壌で育った野菜は濃厚なうまみ。地のものに舌鼓を打つ美食の宿
大地から湧き出る温泉に浸る日は、同じ大地で育まれた土地の恵みを味わいたいもの。旬の味を最高の状態で楽しめるよう、宿の料理人たちは日々食材を探究し、腕を磨いています。冬の味覚の王様・ずわい蟹を名物とする注目の美食の宿にご案内します。
歴史ある温泉地に生まれた宿で美味逍遥
開湯100周年を迎えたばかりの皆生温泉に、2021年3月にオープンした和のラグジュアリー旅館「やど紫苑亭」。広大な敷地にひっそりと佇む平屋造りの瀟洒な建物に150平方メートルの貴賓室2室と半露店風呂付きのスイート8室を備え、塩分豊富な美肌の湯と鳥取の食材をふんだんに使った美食でこまやかなもてなしがされます。
京都の高級旅館や外資系ホテルで実績を積んだ大石昌彦料理長は開業前から生産者を訪ねて地のものを吟味・厳選し、宿独自のコースを考案。冬は松葉蟹2杯を2人で食べ尽くすコースを用意し、大山の豊かな土壌で育った地野菜とともに、水産王国・鳥取ならではの滋味を余すことなく提供しています。
料理人とやりとりしながら蟹の甘みと香ばしさをベストタイミングで味わえる炭火焼き。ゆで蟹、刺し身、鍋などがつく「極上の松葉ガニプラン」は2022年3月20日まで。地元が誇る、知る人ぞ知る逸品をメインディッシュに
料理を彩るのは栄養豊富な日本海に生息する多彩な魚介や大山山麓の黒ぼく土壌で育まれた米や野菜など、知る人ぞ知る地元の逸品ばかりです。
県随一の至高の宿を目指す大石料理長は自ら生産者を訪ね歩いて魅了された本物の食材を用い、冬は日本有数の漁獲量を誇る境港で揚がるイチオシの松葉蟹を登場させます。
白ねぎやブロッコリーを栽培する藤本農園の藤本康央さん。大石料理長のリクエストで少量多品種の無農薬無肥料の野菜も手がけている。「港一番の仲買人が当館用に目利きしてくれた、身詰まりのよい極上の蟹です。鮮度が何より大事ですから専用の水槽に放し、さばきたて、焼きたて、ゆでたてのおいしさを味わっていただきます」。
さらに黒毛和牛の銘柄牛「万葉牛」や毎年初競り価格で話題になる松葉蟹のトップブランド「五輝星(いつきぼし)」など、地元のネットワークを生かした希少で最上級品質の山海の幸も用意。
鮮やかな色合いが特徴の「五輝星」松葉蟹のコースはカウンターでライブ感たっぷりに、創作会席は一皿一皿に工夫を凝らし、鉄板焼きはサーロインとヒレを食べ比べるなど、レストランを思わせるこまやかなプレゼンテーションがされます。
極めつけの鳥取の食材に出合い、大いに盛り上がった後は、美肌の湯にゆっくり浸かってリフレッシュ。心身ともに満たされ、翌日には爽快な朝を迎えることができます。
幻想的な貸切風呂(2時間2万7500円)。下のフォトギャラリーから詳細をご覧いただけます。 Information
やど紫苑亭
鳥取県米子市皆生温泉4-6-12
- プレミアムスイート1室2名利用時で1泊2食付き1名8万4700円〜 ご紹介した貴賓室「玲瓏」は同12万1000円〜。「極上の松葉ガニプラン」プレミアムスイート同10万2850円〜、貴賓室同13万9150円〜(いずれもサービス料込み)全10室 IN15時/OUT11時
撮影/西山 航 取材・文/西村晶子 ※入湯税や宿泊税などが別途かかる場合があります。表示されている宿泊料金は原則、シーズンの最低料金です。INはチェックイン時間、OUTはチェックアウト時間を表しています。料理は状況によって食材、盛りつけなど一部内容が変更になる場合があります。あらかじめご了承ください。
『家庭画報』2022年2月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。