桜花爛漫 桜を守り、伝えるということ 第8回(全12回) 春が来るたび、私たちの目を楽しませ、心癒やしてくれる桜。地域の子どもたちからプロフェッショナルまで、私たちの“宝”を守り、未来に繫げる桜守の物語とともに、とっておきの桜絶景をご紹介いたします。
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「日本一の桜の里」を目指し、市内に1万2000本以上の桜がある伊那市を中心に伊那谷には古くから桜を地域の宝とみなし、大切にする文化が存在します。咲き誇る桜のそばには必ず、熱心に世話をする人の姿がありました。
大草城址公園(長野県・中川村)
満開の八重紅枝垂を観察する桜守の工藤さん(右)と中島さん。先輩から頼まれて引き受けたこの役目を「体力が続く限りはやるよ」と話す笑顔が頼もしい。いずれは大草小彼岸桜中心の桜の園に
「日本で最も美しい村」連合に加盟している中川村にある大草城址公園は、染井吉野や八重紅枝垂(やえべにしだれ)など、10種類以上の桜が計200本以上。開花時期の異なる桜が次々に見頃を迎えるのが特徴ですが、現在、徐々に変わりつつあります。
「村全体で大草小彼岸桜(おおくさこひがんざくら)を増やしていこうという方針で、植え替えを進めているところなんです」。そう話すのは、10年以上ボランティアで桜守をしている工藤 敏さんと中島市男さん。
大草小彼岸桜は地元の人が開発した村生まれの品種で、薄紅色で一重の中輪の花を咲かせる桜です。工藤さんたち桜守の活動は、重なり合う枝を間引くといった作業のほか、草刈りや芝の手入れなども。年2回は村の「愛護会」のメンバーと総勢70人ほどで公園全体の清掃をして、美観を保っています。
自宅が公園のすぐ近くというお二人は、「桜と中央アルプスを一緒に撮影するなら、朝が順光できれいに撮れるよ。散り際の桜吹雪も見ごたえがある」と教えてくれました。
提供/日本花の会上左・思川(おもいがわ)花弁が6~15枚ほどの半八重咲き。発見場所の近くに流れていた思川が品種名に。
下左・八重紅彼岸(やえべにひがん)江戸彼岸と豆桜の雑種と推定される小彼岸系の八重咲き。
上右・大草小彼岸(おおくさこひがん)村で果樹の苗木を生産販売する会社が開発した桜。
下右・鬱金(うこん)淡黄緑の花色が植物のウコンで染めた色に似ていることから鬱金と名づけられたといわれる。
Information
大草城址公園(おおくさじょうしこうえん)
長野県上伊那郡中川村大草5033
撮影/本誌・西山 航 取材・文/清水千佳子
『家庭画報』2023年4月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。