“加賀百万石”を築いた加賀藩前田家。金沢には彼らが代々工芸や芸能などの文化事業を奨励したことで、能楽・加賀宝生や加賀友禅など、独特の文化が残ります。
明治33(1900)年、弱冠16歳にして前田家第16代当主を継いだ、前田利為(としなり)侯爵が昭和5(1930)年以降暮らし、“東洋一の大邸宅”と名を馳せた「旧前田家本邸」。
東京都目黒区の駒場公園内で東京都近代文学博物館として長く利用されてきましたが、この度、総額11億円をかけた2年以上の修復工事を経て、建物の一部を完全復元し、新たに一般公開されることになりました。
ヨーロッパの重厚な意匠が随所に見られるこの建物は、東京帝国大学工科大学教授である塚本 靖を中心に、東京国立博物館の前身、東京帝室博物館の内装を手がけた雪野元吉など、錚々たるメンバーが設計。
利為侯爵と菊子夫人は一男三女とともに暮らし、6人に対して使用人を136人も抱え優美な生活を送ったといいます。
注目は、完全復元を試みた侯爵夫妻の寝室と、利為侯爵の書斎です。90年の時を経てなお残るシャンデリアや家具に加え、壁紙や絨毯、カーテンは当時の古い白黒写真をもとに、その色、柄を忠実に再現。
寝室の鏡台やベッド、書斎のデスクなどは、当時住まいを構えていたイギリスであつらえた、ロンドンの家具メーカー「ハンプトンズ社」製のものが当時のまま置かれています。
菊子夫人の衣装部屋に配された華美なシャンデリアは、今も現役で輝く。