紫陽花に出逢う旅 第5回(最終回) 紫陽花は、じめじめした梅雨の風景に清涼感を与えてくれる花。さまざまな色の、丸くふっくりした花の連なりは春から夏へと向かう時期の日本の風物詩です。北海道から九州まで、さまざまな景色の中で楽しむことができる紫陽花を訪ねました。
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冴えわたる青色に囲まれた“にしん御殿”─北海道・小樽貴賓館(旧青山別邸)
「あじさい園」から見る旧青山別邸。北海道屈指の「牡丹(ぼたん)・芍薬(しゃくやく)園」が盛りを終える7月頃から8月中旬までが紫陽花の見頃。積雪の多い北海道では、瓦葺き屋根は珍しい。和洋折衷の豪奢なインテリアを拝見
明治時代から大正時代にかけて、にしん漁で莫大な財をなした青山家が別荘として建築した「旧青山別邸」。大正6年に着工し、完成までに約6年半を要しました。
総工費は、当時の金額で約31万円。都内の有名百貨店の建築費が約50万円だったといわれていることから、個人所有の建物として、いかに豪奢であるかがわかります。
全18室のうち、1室のみ設けられた洋間。窓の桟に至る細部まで丁寧に造られている。高い美意識をもち、“にしん大尽”と呼ばれた青山政吉の命のもと、山形県酒田から宮大工の棟梁をはじめとする総勢50数名の職人が呼び寄せられ、良質の欅材が大量に運び込まれたといいます。
ほかに紫檀や神代杉などの贅沢な材もふんだんに使われ、狩野派の絵師がこぞって襖絵を描いたこの建物は、2010年、国の有形文化財に登録されました。
旧青山別邸2階窓からの眺め。隣接する「あじさい園」の約600株の花々は、気候条件によりますが、見頃が8月中旬頃まで続きます。
Information
小樽貴賓館(旧青山別邸)
北海道小樽市祝津3-63
表示価格はすべて税抜きです。
撮影/小野祐次 構成・文/安藤菜穂子
「家庭画報」2019年6月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。