8月 徳島の阿波おどり
文/細野晴臣
2020年の阿波おどりはコロナ禍の影響で中止になってしまい、今年こそ行こうと思っていたが仕方がない。だから動画を見ることにしよう。映像を見るだけでも伝わってくる律動感は、日本でも珍しい「グルーヴ」を持っている。
踊りも「歩行」をダンスへと洗練させた世界基準を踏襲していて、ミュージシャンである自分を興奮させるものがある。
かつて徳島を訪れた時、阿波踊り三味線を弾く若者と話をしたことがある。その時、そのリズムが「一拍子」だということを彼が言ったことに衝撃を受けた。
何故なら自分のリズムに関する持論がその「一拍子」だったからだ。跳ねるようで跳ねない、跳ねないようで跳ねるリズムは音楽の真髄なのだ。そのリズムこそ人を恍惚へと導き、いつまでも踊らせる極意である。
来年こそ徳島に行きたいが、きっと見るだけでは我慢できなくなりそうだ。
上のバナーをクリックすると、実際の音を聴くことができます。
細野晴臣(ほその・はるおみ)
音楽家
1947年東京生まれ。1969年「エイプリル・フール」でデビュー。1970年「はっぴいえんど」結成。73年ソロ活動を開始、同時に「ティン・パン・アレー」としても活動。78年「イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)」を結成、歌謡界での楽曲提供を手掛けプロデューサー、レーベル主宰者としても活動。YMO散開後は、ワールドミュージック、アンビエント、エレクトロニカを探求、作曲・プロデュースなど多岐にわたり活動。
公式サイト
www.hosonoharuomi.jp 出典・音響提供/環境省「残したい“日本の音風景100選”」 写真/田中秀明〈イメージナビ・アイノア〉
※こちらの音は、公益社団法人日本騒音制御工学会ホームページ「日本の音風景100選/サウンドライブラリ」からも聴くことができます。
『家庭画報』2020年8月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。