内外の文化交流の歴史を今に伝える
国宝の魅力を識る
中国や朝鮮半島、ヨーロッパとの交流の玄関口であった九州には、諸外国の文化が流入し、ほかの地にはない文化が今に伝わります。大分と長崎に残る神社、寺、教会など、趣を異にする国宝建築4件をご紹介します。
【大分】
神仏習合はじまりの地
国東(くにさき)半島の南東、豊後水道に面する奈多(なた)海岸に昇る朝日。浜に隣接して宇佐神宮の別宮、八幡奈多宮がある。沖合約300メートルに浮かぶ市杵島には、八幡奈多宮の小鳥居が建っている。全国4万の八幡様の総本宮
宇佐神宮(うさじんぐう)
宇佐神宮上宮二之御殿前の申殿(もうしでん)を正面から見る。申殿の向こう、左右に見える檜皮葺きの建物が国宝の本殿で、向かって左から、八幡大神を祀る一之御殿、比売大神(ひめおおかみ)を祀る二之御殿、神功皇后を祀る三之御殿が並ぶ。昼と夜の御座所が連結した八幡造の国宝・本殿
全国に11万社ある神社のうち、八幡様は約4万社、その総本宮が大分県宇佐市にある宇佐神宮です。
725年に創建され、ご祭神は八幡大神(応神天皇)、地主神の比売大神、神功皇后の三神。
本殿は八幡造という建築様式。2棟の切妻造りの建物が前後に接続した形で、間に大きな金の雨樋が渡されている。奥殿(内院)には御帳台、前殿(外院)には御椅子が置かれ、前者が夜の御座所、後者が昼の御座所とされている。写真左が一之御殿、右が申殿。穏やかな海に囲まれた国東半島は、畿内、出雲と同様に古くから開けた地であり、大陸との航路でもあったことから仏教も早くから流れ込みました。それが古来の山岳信仰、宇佐の八幡信仰と結びつき、神仏習合の先駆となったのです。
広い境内の一角には738年に神宮寺として建立された弥勒寺の跡が残り、その面影を今に伝えます。
太古から斧を入れずに守られてきた原生林に囲まれた境内は、清々しい空気に包まれています。
西参道の南側に残る弥勒寺の跡。発掘調査により、金堂前に東塔と西塔を並べた、奈良の薬師寺と同じ伽藍配置だったこと確認された。大鳥居をくぐり、石段を上って国宝の本殿のある上宮へ。
平成の大修理により社殿の彩色、檜皮葺きの屋根、錺(かざり)金具の鍍金(ときん)などが改められ、漆喰の白とあいまって本殿は青空のもとで美しく輝いています。
上宮の南正門となる南中楼門(勅使門)。参拝はこの門の外から行う。八幡総本宮 宇佐神宮大分県宇佐市南宇佐2859
TEL:0978(37)0001
開門時間:5時30分~19時(4月~9月)、6時~19時(10月~3月)
URL:
http://www.usajinguu.com/宇佐神宮境内の動画はこちらhttps://www.kateigaho.com/travel/local/84046/ 〔特集〕国宝・温泉・美味の宝庫「九州を愛す」(全19回)
※今特集は、2016年3月号「国宝を観る」、2018年2月号「極上の湯宿を楽しむ」、2018年6月号「緑、眩しい九州へ」、2018年11月号「秋の国東半島へ」などを再録、再編集したものです。
撮影/小野祐次
『家庭画報』2020年9月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。