国宝・温泉・美味の宝庫「九州を愛す」 第3回(全19回) 諸外国との交流で生まれた独自の文化、火山が生み出す豊かな湯量の温泉、山海の恵み、四季折々の食材──。多様性に満ちた九州の魅力を、「国宝」「温泉」「お取り寄せの美味」をキーワードにしてご紹介します。
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国宝の魅力を識る
中国や朝鮮半島、ヨーロッパとの交流の玄関口であった九州には、諸外国の文化が流入し、ほかの地にはない文化が今に伝わります。大分と長崎に残る神社、寺、教会など、趣を異にする国宝建築4件をご紹介します。
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檀 ふみさんと訪ねる国宝建築
1933年国宝に指定、2018年世界文化遺産に登録された大浦天主堂。2018年に外壁が塗り直され、優美な姿を見せてくれる。Ⓒ2020 長崎の教会群情報センター信仰の自由を求めた歴史を刻む
大浦天主堂(おおうらてんしゅどう)
長崎湾を望む高台にある大浦天主堂は、パリ外国宣教会によってフランス人のための祈りの場として、また殉教した26人の聖人に捧げる教会として1864年に建てられました。
「信徒発見という劇的なストーリーをうかがい、当時の神父さまや信者のかたの心に思いを馳せると胸が熱くなります」と檀 ふみさん。ストール/ゲイナー(チェルキ)正式名称は「日本二十六聖殉教者聖堂」。施工に携わったのは天草出身の若き棟梁、小山秀之進でした。
教会建築に携わるのは初めてだった小山は、こうもり天井のアーチを形作るために竹を編むなど、和洋折衷の工法を用い、世界に誇る天主堂を完成させました。
中央大祭壇の左右の窓にはステンドグラスがはめ込まれ、幻想的な雰囲気を醸し出している。天主堂の公開から1か月後、浦上の隠れキリシタンたちが初代主任司祭を訪ね、そっと語りかけました。
「私どもはあなたさまと同じ心でございます。サンタ・マリアさまの御像はどこ?」。これが宗教史上の奇跡と呼ばれる「信徒発見」です。
1873年まで続いたキリシタン弾圧、軍国主義による抑圧、被爆と苦難の道をたどった大浦天主堂。長崎が刻んだ稀有な歴史とともに、未来につなぎたい国宝です。
内部は創建時とほぼ変わっていない。ゴシック様式で建てられ、吊り天井のようになったこうもり天井が特徴的。大浦天主堂長崎市南山手町5-3
TEL:095(823)2628
拝観時間:8時~18時(17時30分最終受付)
拝観料:一般1000円
URL:
https://nagasaki-oura-church.jp/檀 ふみ(だん・ふみ)さん数多くの映画やドラマへの出演、音楽や美術番組の司会など、幅広い分野で活躍。エッセイの名手でもあり、『檀流きものみち』『檀流きもの巡礼(たび)』(いずれも小社刊)など著書多数。 〔特集〕国宝・温泉・美味の宝庫「九州を愛す」(全19回)
※今特集は、2016年3月号「国宝を観る」、2018年2月号「極上の湯宿を楽しむ」、2018年6月号「緑、眩しい九州へ」、2018年11月号「秋の国東半島へ」などを再録、再編集したものです。
撮影/本誌・坂本正行 スタイリング/中村抽里 ヘア&メイク/馬場利弘〈竹邑事務所〉
『家庭画報』2020年9月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。