かつて真珠は、何百もの貝を開いてようやく、ひと粒かふた粒見つけることができる、天然の偶然の産物でした。ミキモトの創業者である御木本幸吉が真珠の養殖に成功したのは、1893年のこと。のちに世界から真珠王と呼ばれた彼は、エジソンさえ驚嘆した真珠養殖の成功者として宝飾史にその名を残しています。「世界中の女性の首を真珠で飾ってみせます」という御木本幸吉の名言の通り、それまで限られた一部の特権階級のものだった真珠のジュエリーはミキモトによって、世界の女性の手に届くものとなりました。創業間もない明治時代からヨーロッパの技術やデザインを積極的に導入したことも、現在の日本のジュエリー文化に多大な影響を与えています。
数ある宝石の中でも、真珠貝という生き物によって育まれる真珠は、ジュエリーとなるまでに膨大な手間と時間を必要とします。ミキモトでは母貝の生育に始まり、核入れから浜揚げまで、丁寧に愛情を込めて真珠と向き合っています。こうして産み出された真珠の中でも、厳しい選別を経てミキモトのジュエリーとなれるのは、わずか1割にも足りません。艶やかで優美なミキモトの真珠は、自然の恵みと人の叡智、そして愛情の結晶なのです。