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職人技はいかにして芸術となるか? ショーメのハイジュエリー展で見た“人の手”の力

2021.12.08

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2021年11月、横浜・三溪園で、フランスを代表するジュエリーメゾン「ショーメ」のハイジュエリー展が催されました。一般公開に先立って開かれたプレス向け発表会の内容を交えながら、大盛況のうちに幕を閉じた本展をリポートします。

宝石やデザイン、技巧の根本にある
“人の手”にフォーカスしたハイジュエリー展



ジュエリーも工芸品も、確かな技術なしに良いものは作れません。ではそれ自体が、「芸術」と称されるほどの価値を持ち、見る人の心を震わせるまでになるには、優れた技術のほかに何が必要なのでしょうか――。

11月下旬にショーメのハイジュエリー展「フランスと日本文化のConversation―ショーメのサヴォワールフェールと日本の名匠3人との対話」が開催され、会場となった横浜・三溪園には多くの人が訪れました。


ショーメのハイジュエリー展入り口 舞台となったのは神奈川県横浜市中区にある三溪園。その園内にある鶴翔閣が展示会場です。

「優れた職人技が作り出す芸術」にスポットを当て、60ピースを超えるショーメのハイジュエリーと日本の名匠の作品とをテーマごとに展示するという、従来のジュエリー展とは一線を画すアプローチが話題を呼んだ本展。

今回メゾンとのコラボレートを果たした名匠は、無数の竹ひごを使ったインスタレーションが高い評価を受ける竹芸家の4代 田辺竹雲斎氏、世界的にも有名な盆栽作家の木村正彦氏、日本刀の名匠であり800年続く大阪・月山家の5代目 月山貞利氏と息子の貞伸氏です。

最高峰の技術に込められた高い精神性。
ハイジュエリーと竹芸のコラボレートに心奪われる



ショーメのハイジュエリーと田辺竹雲斎氏の作品約2週間かけてこのインスタレーションを弟子とともに作り上げたという田辺氏。「ハイジュエリーが作品中に設置された瞬間、“この場が完成した”と強く感じた」という。

最初の展示エリア〈余白の美〉に入ってまず圧倒されるのが、竹芸家 4代 田辺竹雲斎氏が本展のために制作した竹のインスタレーション。約6000本もの竹ひごを編んで制作したという大きなかまくらのような空間や、うねりながら形を変えていく竹の集合体の上に、ショーメのハイジュエリーが展示されています。

並んだのは「編む」という共通点をもったハイジュエリーのコレクション。本展のオブザーバーを務めたジュエリージャーナリストの本間恵子氏は、「硬い金属を “まるで編んでいるかのように見せている”ジュエリー職人の超絶技巧が素晴らしい」と語ります。

風に吹かれて飛んでいきそうな、繊細なリボンを表現したコレクション。裏側に隠れたいくつものヒンジ(可動部分)が、編んでいるような見た目と、体の曲線にフィットするしなやかさを生んでいる。

盆栽とジュエリーの共通点とは――
自然の産物と人の技が美を生む



ショーメのハイジュエリーと盆栽3基の盆栽の間に、花鳥風月のハイジュエリーが並ぶ。ジュエリーのスタンドは、盆栽のフォルムを3Dでとらえてモチーフにしたという。

次なるゾーン〈自然を彫る〉では、自然の動植物をモチーフにしたショーメのハイジュエリーと、1mほどの高さがある盆栽3作品が圧倒的な存在感で私たちを出迎えます。

これら盆栽を手がけたのは、国内外で高い評価を受ける盆栽作家の木村正彦氏と、木村氏の愛弟子で現在は独立して活躍する森山義彦氏。

ショーメのハイジュエリーと盆栽ショーメの自然への畏敬の念と憧憬が表れた、動植物をモチーフにしたジュエリーが並ぶ。

木村氏によれば、ジュエリーと盆栽には非常によく似た点があるといいます。「どちらも、自然が生んだものに人が手を加えることによって、美しくなります。宝石の原石と同じように、盆栽の木も、厳しい自然の中からとってきたものに職人が磨きをかけることで初めて美しい姿を見ることができるのです」。

緻密な金細工を施したハイジュエリーが、
日本刀との競演で一層輝きを増して



砂鉄と玉鋼で作られた日本庭園を思わせる幻想的な空間に、精緻な金細工が施されたジュエリーが展示されている。日本刀には月山鍛冶最大の特徴である「綾杉肌」が浮かぶ。

〈金属の芸術〉のエリアでは、大阪・月山家の5 代目 月山貞利氏と息子の貞伸氏が手がけた日本刀と、高度な彫金や金細工の技法を用いたショーメのハイジュエリーが競演。

貞伸氏によれば、日本刀は武器としてのみでなく、御神刀などの宗教的役割、権力者の権威を示す象徴としての意義、また鉄の工芸品としての価値など、さまざまな側面を持っているといいます。ジュエリーの歴史とも共通するこれらの文化的背景は、日本刀が道具的価値を超えた「美しさ」を追及して作られてきた理由でもあるのです。

ショーメのハイジュエリーあまり知られていないことだが、ショーメの創業者マリ=エティエンヌ・ニトは金細工師であったそう。貴金属加工・細工などの手仕事は、ショーメのルーツのひとつでもある。

匠とのコラボレートを通じて、ハイジュエリーの魅力に迫った本展。見る人の心を奪うほどの美を生み出す人の手の素晴らしさと、その無限の可能性に触れる、貴重な機会となりました。

●お問い合わせ
ショーメ
電話 03-5635-7057
https://www.chaumet.com/jp
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