伝統と革新を融合させた老舗が誇る美しき意匠
きもの「雲取景年百花」330万円/千總京都烏丸三条で1555年に創業した、京友禅の老舗「千總(ちそう)」。代々受け継がれてきた2万点にも及ぶ所蔵品をもとに、専属の図案家によって描かれた伝統的かつモダンなデザインを、養蚕から生地を織り上げるまで一貫して国内で製作するきものは、芸術品と呼ぶにふさわしい美しい作品ばかり。
明治時代、形骸化する友禅のデザインを一新するため、京都画壇を牽引する日本画家に友禅の下絵を依頼した千總当主・12代西村總左衛門は、画家・今尾景年とともに『景年花鳥画譜』を出版。
こちらの訪問着は、そこに載る四季折々の花を、雲取りから飛び出すように生き生きと描いた一枚。引き締まった印象に見せる濃い地色と柔らかな雲取りのコントラストが洒脱な、京友禅らしい風雅な逸品です。
卓越した職人技を随所に感じて
デザイン、下絵、糊置きから、染めや仕立てに至るまで約30工程もの専門の職人による分業を経て一枚のきものが完成する京友禅。
そのなかで友禅染をより引き立てる加飾が、金彩(箔置き)や刺繡です。
繊細なぼかしで花びらや葉の一枚一枚を表情豊かに描き、さらに部分的に摺り箔や、白や金糸の刺繡を施すことで重厚で華やかな一枚に仕上がっています。
表示価格はすべて税込みです。
撮影/ケヴィン・チャン スタイリング/伊藤和子
『家庭画報』2022年3月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。