第37回 心を豊かにしてくれるブランドブックの世界へ!
この連載でもおなじみのブランド各社が、ファッションアイテムのみならず、魅力的な書籍を手がけていることをご存じでしょうか。
トップメゾンといわれるブランドは特に、芸術や文化にとても敏感です。それは環境やサステナビリティへの取り組みなどと同じく、社会をリードする存在としてそれらを守り、発展させていくというミッションを抱いているから。だからこそ、ブランドが生み出す書籍は、さまざまな分野のエッセンスが凝縮されており、大人の知的好奇心を刺激してくれるのです。
今回は、私たちの世界を広げ、心を豊かにしてくれるブランドブックの数々をご紹介します。トップメゾンならではの豪華本から「こんなものも!」と驚くユニークな本まで、ファッションだけではない、ブランドの新たな一面を探っていきましょう!
ブランドの目線を通して世界を旅する
20年以上にわたって独自の出版物を生み出してきた「ルイ・ヴィトン」。“旅”をルーツに持つブランドらしく、世界各国の都市をテーマにしたガイドブックや写真集、アート作品集などが豊富に揃い、現在、書籍のタイトル数は100を超えるのだそう。
今年新たに成都とドバイの2都市が加わり、既刊15都市の内容もアップデートされた『シティ・ガイド』シリーズは、さまざまなバックグラウンドを持つライターや著名なゲストがおすすめのスポットを紹介するガイドブック。ラグジュアリーなホテルやレストランのほか、ローカルの名店やちょっとディープなスポットまで、多彩な情報が網羅されています。
内容が一新された『シティ・ガイド パリ』のデジタル版は誰でもダウンロード可能。世界的パティシエ、ピエール ・エルメ氏ほか、現地をよく知るライター陣がパリを案内する。 〈前列左から〉『ファッション・アイ ブエノスアイレス』、『ファッション・アイ ラスベガス』各6270円 『シティ・ガイド 成都』、『シティ・ガイド マイアミ』各3740円 〈後列左から〉『トラベルブック 地中海』、『トラベルブック マーズ』各5610円 『シティ・ガイド パリ』3740円 トランク112万7500円 スカーフ6万1600円/すべてルイ・ヴィトン(ルイ・ヴィトン クライアントサービス)『ファッション・アイ』シリーズは、ファッションフォトグラファーの作品を通して、彼らが見た都市の姿を追体験できる写真集です。ページをめくるたびにその場の空気を感じられるような、大判で迫力のある写真は見応え十分。実際に訪れたことがある場所の新たな魅力を発見することもできそうです。
同じく旅をテーマにした書籍でも『トラベルブック』シリーズは、また違ったアプローチが特徴。アーティストたちがそれぞれの手法で国や都市を描き出し、その魅力を伝えます。最新刊の『トラベルブック 地中海』は、海面から深海にいたるまで、世界最大の内海とその生態系に没入していくような抽象的な絵画が楽しめます。火星への旅をテーマにした『マーズ』やゲームの画面のようなピクセルアートで描かれた『東京』もユニーク。多種多様なルイ・ヴィトンの書籍から、来年の旅のイメージを膨らませてみてはいかがでしょう。
メゾンの歴史とものづくりの精神を知る
「エルメス」からは、メゾンが誇る長い歴史やものづくりの精神を身近に感じることのできる書籍が登場しました。
エルメス唯一の社史であるマンガ『エルメスの道』。5代目社長のジャン=ルイ・デュマ氏の発案により1997年に出版されたこの本に、直近20余年のメゾンの歩みを3つのエピソードにして加えた新版が2021年に誕生しました。初代のティエリ・エルメスが馬具工房を創業してから現在にいたるまで、6世代・180年以上にわたって受け継がれてきたさまざまな物語が、親しみやすい形で綴られています。
〈左〉『エルメスのえほん おさんぽステッチ』2640円 作:100%ORANGE 講談社刊 〈右〉新版『エルメスの道』1760円 竹宮惠子著 中央公論新社刊2022年11月に発売されたばかりの『エルメスのえほん おさんぽステッチ』はメゾンが初めて手がける絵本! 職人のおじさんを主人公に、行く先々で出会う動物たちの願いをものづくりを通して叶え、願い以上のものを生み出していきます。子どもでも読めるやさしい文章とかわいらしいイラストの中に、全世代に伝えたいエルメスのクラフツマンシップを詰め込んだ1冊は、大人が読んでも心に響くはず。贈り物としても素敵ですね。
エルメス財団編『Savoir&Faire 木』2750円 講談社選書メチエ 講談社刊『Savoir & Faire 木』は、自然素材に光を当て、素材に関わる職人技の伝承や発展、普及を目指して行われている、エルメス財団の「スキル・アカデミー」というプロジェクトから生まれた1冊。歴史や哲学、植物学、建築、アートなど、あらゆる分野から“木”について探究する内容で、日本の文化や生活にも深く根差す素材を改めて見つめ直すきっかけをくれそうです。
豪華なビジュアルとともに芸術・文化に触れる
メゾンのクリエイションや、世界観に触れることができるのもブランドブックの醍醐味。下写真左は、今年発表された「ブルガリ」のハイジュエリー&ウォッチの新作コレクション「ブルガリ エデン ザ ガーデン オブ ワンダーズ」をテーマにした1冊。著名な写真家たちによる美しい写真の中でも、見どころは韓国のチョ・ギソク氏が撮影した幻想的かつ華麗な世界です。通常目にすることの少ないデザインスケッチなども収録され、ハイジュエリーという芸術を堪能することができます。
〈左から〉最新刊『ブルガリ エデン ザ ガーデン オブ ワンダーズ』$100.00 U.S.(参考価格) 「頭脳」「心」「手」の3つの章で構成され、珠玉のジュエリーコレクションとともに、世界の様々な分野で活躍する女性たちの言葉が載る『ブルガリ マニフィカ:ザ パワー ウーマン ホールド』€90.00 ユーロ(参考価格) 『ラ クチーナ ディ ルカ・ファンティン』1万6500円/すべてブルガリ(ブルガリ ジャパン)ブルガリならではの書籍として私が注目したのは、上写真右の『ラ クチーナ ディ ルカ・ファンティン』です。ブルガリ銀座タワーにある「ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン」のエグゼクティブシェフ、ルカ・ファンティン氏が手がけた、ブルガリ初のフォト料理本である本書。食材と料理を写した圧巻の写真とともに、四季を表現する32品のレシピを収録しています。一般的な料理本のスケールをはるかに超えた大きさと装丁は、まるでアートブックのよう。腕に自信のある人はレシピにも挑戦してみて。
『イタリア文明宮』1万1000円/フェンディ(フェンディ ジャパン)ローマ郊外にある「イタリア文明宮」は1942年の万国博覧会のために1937年に建てられた建築物。第二次世界大戦のために万博は実現しなかったものの、20世紀ローマ建築の象徴として、現在まで保存されてきました。ローマを中心に文化財の修復や保全にも力を入れる「フェンディ」は、2015年よりこの歴史的建造物を本社として活用。書籍『イタリア文明宮』では、モダンで独創的な建築の美しさをさまざまな写真で伝えています。
年齢を重ねた今、写真やアートの見え方が若いときとは変化していることを感じます。かつてはペラペラとめくって終わりだったものに、深い意味や訴えかけるものを感じ取れるようになったのは、人生の中で積み重ねてきた経験や感性があるから。本を通してブランドが伝えたいメッセージを理解することで、より知的な服選びができるかもしれませんね!
●お問い合わせ
ルイ・ヴィトン クライアントサービス
電話 0120-00-1854
エルメスジャポン
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ブルガリ ジャパン
電話 03-6362-0100
フェンディ ジャパン
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