オーラを放つ時代の主役たち 第2回(全6回) その圧倒的な存在感、目が離せなくなる仕草や笑顔……。時代をリードし、活躍する人々の輝く姿を、写真家、篠山紀信さんが撮り下ろしました。素顔が垣間見られるインタビューとともにお届けします。
前回の記事はこちら>> 時代の主役たち・竹野内 豊さん
衣装の詳細はフォトギャラリーで解説。「年齢と経験を重ね、執着を手放せるようになりました」
華麗にコートを羽織り、時にはダイナミックにステップを踏む竹野内 豊さん。映画『イチケイのカラス』も大ヒット中です。確かな演技力に、軽妙でお茶目な雰囲気も加わり、ファン層を広げました。
「20代から40代前半までは、撮影に入る前に、与えられた役について調べ、イメージを固めて挑むこともありましたが、今は現場で生まれるものを大切にしています。年齢と経験を重ね、執着を手放せるようになったからかもしれません」
それにはすべての仕事がストップしたコロナ禍の影響もありました。「自粛生活をしているときに、役者の仕事は、共演者やスタッフのかたがたと呼吸を合わせ、チーム全体で“真実のかけら”を追い求めることだと、深く再認識したのです」。
全員がベストを尽くすから生まれる、圧倒的なリアリティ。その中心に竹野内さんがいることが、作品からも伝わってきます。
「役者の仕事は、フィクションを現実として表現すること。演じるのは自分の心と体ですから、そこにはどうしても生きざまが出てしまう。だから、自分に正直に、堅実に生きていきたい。若い頃は無我夢中でしたし、うぬぼれがあったかもしれません。今振り返ると、恥ずかしいかぎりですが、怖いもの知らずだからこそ、できた挑戦もありました」
衣装の詳細はフォトギャラリーで解説。経験を重ねた今、恐れるのは慢心だといいます。「慣れてしまうと、成長も止まってしまう。今日、二十数年ぶりに篠山先生のカメラの前に立ちました。そのときに、先生の中にある“少年の心”の輝きが増していると感じて……。ご自身の頂点を更新し続けていることに、刺激を受けました」。
息がぴったり合った撮影では、天真爛漫かつやんちゃな表情も見せてくれました。
「撮影前、どう動くかと考えていたのですが、撮り始めるとまっさらな自分になっていました。どこまでも飛べるような感覚も生まれて。これは先生の撮影だからこそ経験できることだと感じています」
常に変化を起こすためには、環境も大切。「最近、服や靴を大量に処分したことで、自分の中に新しい風が吹きました」と続けます。
「自分で洗濯やメンテナンスをしますし、物持ちがいいほうなんです。なので、もったいないと思いつつも、断捨離をやりきりました。やはり、頭で考えるよりも、行動したほうがいいですね(笑)。役者の仕事は、常に新しい感性を取り入れ、刷新することが必要です。でも、ストイックにはなりませんよ。オフのときは何も考えません。隙だらけでジャージー姿の普通のおじさんです(笑)」。
衣装の詳細はフォトギャラリーで解説。竹野内 豊1971年東京都生まれ。1994年俳優デビュー。近作に、『連続ドラマW 東野圭吾「さまよう刃」』、映画『シン・ウルトラマン』などがある。2022年『京都国際映画祭』で三船敏郎賞を受賞。2023年映画『イチケイのカラス』ほか『唄う六人の女』、『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』が公開予定。 表示価格はすべて税込みです。
撮影/篠山紀信
スタイリング/下田梨来 ヘア&メイク/須田理恵 取材・文/前川亜紀
『家庭画報』2023年4月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。