オーラを放つ時代の主役たち 第3回(全6回) その圧倒的な存在感、目が離せなくなる仕草や笑顔……。時代をリードし、活躍する人々の輝く姿を、写真家、篠山紀信さんが撮り下ろしました。素顔が垣間見られるインタビューとともにお届けします。
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衣装の詳細はフォトギャラリーで解説。表情が変わるたびに光の粒が生まれ、動くたびに舞い上がる……そんな印象を残す撮影を終え、「とても楽しく、私の中にある明るさをすべて出しました」とやわらかな笑顔で語る黒木 華さん。最新作は、江戸時代末期の庶民の交流を描いた映画『せかいのおきく』です。
「私が演じるおきくは、長屋で質素な暮らしをしている武家育ちの女性。声を失うという悲劇に見舞われながらも、恋をして、懸命に生きる強さと優しさを意識して演じました。人とのつながり、循環型社会だった当時の生活など、今の時代に求められている尊さがある作品です」。
映像デビューから11年間、60以上の作品に出演し、国際的にも高い演技力が認められています。
「私自身、自分のお芝居に自信が持てないんです。だから常に全力を尽くし、撮影現場で生まれるものを大切に、私が見聞きしてきたことを考えながら表現しています。とはいえ、役に入り込まないのは、私の中の“第三の眼”が私を冷静に観察しているからだと思います」。
全力だからこそ、壁にぶつかったことも。
「5年ほど前、私が持っているものが、自分が求めるレベルまで達していないと焦ったことがありました。お芝居が大好きでこの仕事をしているのに、それすらわからなくなってしまって。今振り返ると、ずいぶん空回りしていたと思います」。
自分の気持ちを整理し、大きな壁を乗り越えたことで、スイッチの切り替えがうまくできるようになったそう。
「仕事とシンプルに向き合うようになり、ずいぶん楽になりました。そのためには、心身をフラットに保つことが大切。体を温めるために毎日入浴し、風邪の予兆を感じたら、プロポリスエキスの出番です。思えば、これは母がやっていたことと同じ。きちんと生活することは、仕事の基本なのかもしれません」
衣装の詳細はフォトギャラリーで解説。「いつかジブリのキャラクターの声を演じてみたい。自分でも向いていると思うんです」
生活を重視する黒木さんは、食事も気をつけており、自炊することも多いそう。
「煮物は食卓によく登場しますね。ときどき無性にソース味の粉ものが食べたくなって、お好み焼きも作ります(笑)。きちんと生活したいのにやめられないのは夜更かし。料理、動物などのかわいく楽しい動画を見るうちに夜も更けており……適度なゆるさも大切ですよね」。
いたずらっぽい笑顔で語る黒木さんの目標の一つは、スタジオジブリのアニメ作品に出演すること。
「日常とは異なる、独自の世界を生きるキャラクターの声を演じてみたい。自分でも向いていると思うんです(笑)。個人的に挑戦したいのはスカイダイビング。今、好奇心が未知の世界に向いていると感じます。ほかにも旅、そして新しい文化や人に出会うこと……視野を広げ、お芝居に生かせたらいいですね」。
衣装の詳細はフォトギャラリーで解説。黒木 華1990年大阪府生まれ。2010年にNODA・MAP番外公演『表に出ろいっ!』でデビュー。2011年映像作品に初出演。2014年に『小さいおうち』でベルリン国際映画祭最優秀女優賞を日本人女優最年少で受賞。2016年『リップヴァンウィンクルの花嫁』で映画単独初主演。同年『重版出来!』でテレビドラマ初主演。『母と暮せば』、『日日是好日』、『浅田家!』などで日本アカデミー賞を受賞。2023年は映画『ヴィレッジ』(4月21日)『せかいのおきく』(4月28日)などが公開予定。 表示価格はすべて税込みです。
撮影/篠山紀信
スタイリング/山本マナ ヘア/shuco〈3rd〉 メイク/MICHIRU for yin and yang〈3rd〉 取材・文/前川亜紀
『家庭画報』2023年4月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。