【特集】あの最高峰時計はなぜ愛されるのか? 家庭画報.comが最高峰時計ブランドの“愛される理由”を徹底分析。各ブランドから、歴史や性能を楽しめる「入門時計」、私のスタイルにフィットする「定番時計」、いつかは欲しい「夢時計」の3本をご紹介します。
特集トップはこちら>> 「クレドール」とは――
「クレドール」のルーツである「セイコー」は、1881年服部時計店として創業した日本を代表するウォッチカンパニーです。主に輸入時計の販売と修理から事業をスタートさせ、1892年に時計製造工場「精工舎」を設立。1913年日本初の腕時計を製造、1964年の東京オリンピックでの公式計時、1969年世界初のクオーツウォッチの製品化に成功するなど、日本の時計史をリードしてきました。
時計に印されているクレストマーク。「クレドール」の語源である“黄金の頂き”を、自然をテーマとして表現しています。“頂き”から漢字の「山」の字をモチーフとし、天に届く3つの星と融合するマークが基本型に。安定感を表現するために、山の底辺部を左右に延ばし、上部は細く、下部はより太くしてメリハリを持たせました。それらを滑らかな曲線でつなぎ、金の持つ柔らかさと豊かさを表現しています。1974年、貴金属を素材としたセイコー特選腕時計をグループ化した「セイコー クレドール」が誕生。「クレドール」とは、フランス語で“黄金の頂き”という意味で、日本人ならではの感性、最新かつ高度な技術、時計本来の伝統工芸技能の3つの頂きを目指して、国内の工房で製造しています。
ハイジュエリーウォッチの製作を担う、彫金師の照井清氏。曇りなく輝く一刀彫りで、独自の彫金技術を確立し、2002年「現代の名工」を受賞、2007年黄綬褒章を受章しています。日本を代表する名工が作る腕時計を購入できるのは、国内ブランドのクレドールならでは。1980年に世界一薄いクオーツムーブメント搭載モデル、1982年には2億2000万円モデルを頂点とするジュエリーウォッチを発表。一方で使いやすく、いつの時代も普遍的な価値を追求したシリーズも発表するなど、高度な職人技によるオートクチュール的な時計と、日本人の感性に働きかけるシンプルな時計の両方から、日本らしいラグジュアリーウォッチの在り方を提案しています。
日本の匠の技と美意識の結晶
クレドールのこだわりは、日本の匠の技を駆使した時計作り。わずか1.98㎜という世界有数の極薄機械式ムーブメントを、1993年から一部のモデルで採用しています。また少数生産で、ひとつのムーブメントの組み立て・調整は1人の熟練の時計師によって行われています。その他にも、ダイヤモンドのきめ細かなセッティング、手作業での組み立てと仕上げによるブレスレット、“現代の名工”が手掛ける独自の彫金など、時計それぞれのパーツに、日本の職人技と繊細な美意識が吹き込まれています。
彫金師・照井清氏が施すクレドールの彫金の特徴は、彫る模様に合わせて形状の異なる刃先を使い分けることにより生まれる立体的でシャープな造形。わずか0.15㎜の深さで細かな模様を施した腕時計は、芸術品の趣です。「GBBD981」(下)340万円(クレドール) 表示価格はすべて税別です。 撮影/サトウアサ 取材・文/磯 由利子