スタイリストのおおさわ千春さんが大人の女性が手にすべき「本物」をご紹介するこの連載。ご自身の体験談をもとに、迷い世代の日常に必要な“ブランドの力”をどう取り入れるべきかを指南いただきましょう。第19・20回は、おおさわさんにとって、「大人の女性のシンボル」であり、お洒落に欠かせない存在である、エルメスのスカーフについて。
〔迷い世代の服選び〕
40代にこそ効く「ブランド力」
第19回 エルメス
シルクのスカーフは
「素敵な大人の女性」の象徴
皆さんは、子供の頃「大人になったら、こんなお洒落がしてみたい」と夢見ていたスタイルはありますか? 私にとってはシルクのスカーフが、素敵な大人が身に着けるものとして、ずっと憧れていたアイテムでした。
10代の頃、海外の映画を観て、女優さんが頭にスカーフを巻いてオープンカーを走らせる姿に、少女ながら胸を躍らせたものです。それはどうやら大人も同じだったようで……とてもお洒落だった私の母も叔母も、お出かけの時には頭にスカーフを巻いたり、コートの衿元にあしらったりと、とても素敵でした。
オーダーメイドが当たり前だった時代、その装いに個性を与えるシルクのスカーフは、お洒落も生き方も自由な女性の“象徴”のような存在だったのかもしれません。母が綺麗なスーツにスカーフをあしらって出かける姿は、私にとってのお洒落の原点になっていると思います。
1937年に誕生した初代カレ「オムニバスと白い貴婦人のゲーム」がこちら。ビンゴや昔のボードゲームに着想を得た作品で、1820年代に出現した乗合馬車(オムニバス)が描かれています。©Studio des Fleurs初めてスカーフを買うなら
エルメスと決めていた
そんな私が、初めて自分でシルクのスカーフを買ったのが今から30数年前、20代半ばの頃のこと。仕事で人生初のパリコレを見に行った時、何か記念になるものを買いたいと選んだのが、「大人の象徴」だったシルクのスカーフ。どうせ買うなら、やはり最高峰のエルメスでと決めていました。
今でこそ、エルメスのスカーフは、様々なサイズや素材のバリエーションが揃いますが、当時あったのは90×90㎝の「カレ」と呼ばれるシルクツイルのスカーフがほとんどでした。
カレが誕生したのは1937年。初代カレのデザインのもとになったのは、3代目社長のエミール・エルメスのオフィスに飾られていた水彩画だそう。