スタイリストのおおさわ千春さんが大人の女性が手にすべき「本物」をご紹介するこの連載。ご自身の体験談をもとに、迷い世代の日常に必要な“ブランドの力”をどう取り入れるべきかを指南いただきましょう。第27・28回は、おおさわさんが「パッショネートな輝きからエナジーをもらっている気がする」という、ブルガリをご紹介します。
〔迷い世代の服選び〕
40代にこそ効く「ブランド力」
第27回 ブルガリ
マイ・ファースト・ブルガリは
思い出が詰まった「人生の宝物」
「ジュエリーや時計は人生と共にあるもの」――私が、そんな言葉を実感したのが、ブルガリの「ブルガリ・ブルガリ モンテカルロ」という時計です。この時計は、私のファースト・ブルガリで、30代後半の頃、当時スタイリングさせていただいていたニュースキャスターの女性と一緒に、撮影のために訪れたドバイのホテルのブティックでひと目惚れしたもの。
それまでは、ぼんやりと「今度買うなら、地金のブレスレットタイプの時計がいいな」と考えてはいましたが、特にこの時計に目をつけていたわけではありませんでした。何の予備知識もなくこの時計に出合って、恋に落ちたのです。
下の時計が、ドバイで購入した「ブルガリ・ブルガリ モンテカルロ」。今でもいざというときにつけると自信が湧くという宝物。「以前、仕事でブルガリ本社のイタリア人女性とお目にかかったとき、たまたま同じ“モンテカルロ”をつけていて。『どこで買ったの?!』と驚かれ、とても稀少な時計だと伺いました」。上の時計はステンレス製で、左の「ビー・ゼロワン」のリングをコーディネートし、デイリーに愛用中。(すべておおさわさん私物)もちろん、私にとっては、ぽんと買えるような金額ではありませんでした。しかし、滞在中何度もブティックを訪れては、「やっぱり素敵だな……」とため息をつく私に、一緒に行っていたキャスターの女性が「おおさわさん、これは出会いよ! これからの自分のためにこの時計を買って、頑張ればいいじゃない」と、背中を押してくれたのです。仕事仲間でもあり、大好きな友人でもある彼女のひと言で、私はその時計を購入することに決めました。
あれから二十数年経ちますが、もちろん今も現役。実は、このキャスターの女性が病気で他界してしまい……。この時計は、見るたびに、楽しかったドバイへの旅や大好きな彼女のことを思い出す、“人生の宝物”なのです。
19世紀の創業時から受け継ぐ
巧みな地金細工
私が「ブルガリ・ブルガリ モンテカルロ」で特に気に入っているのが、吸いつくようなつけ心地のブレスレット部分。これは、ガス管から発想された「トゥボガス」と呼ばれるブルガリ独自の技法を用いたもの。金属なのに伸縮性があり、滑らかに腕にフィットするように作られた地金細工が、うっとりするほど美しいのです。
この巧みな地金細工は、もともとはシルバースミスと呼ばれる銀細工職人だった創業者のソティリオ・ブルガリの時代から脈々と受け継がれてきたクラフツマンシップによるもの。
創業当時のブルガリ。ショーウィンドーいっぱいに銀製品がディスプレイされています。彼の手がけた美しい銀装飾は、伝統的なグランド・ツアー(18世紀に起源をもつ、イギリスの特権階級の若者たちが見聞を広めるためにイタリアをはじめヨーロッパ大陸を訪れた旅行のこと。滞在先で、絵画や工芸品などを購入し、大量の美術品をイギリスに持ち帰った)でローマを訪問したイギリス人観光客から圧倒的な支持を得て、事業を拡大。
その後、ブルガリは、銀細工での実績を礎に、ハイジュエリーの制作を手がけ、イタリアンジュエラーを代表するブランドへと成長していきます。
ブルガリが所蔵しているシルバーのアーカイブネックレス。コインをチェーンでつないだ繊細な作りは、今見ても新鮮な美しさ。1880年頃の作品です。つややかな地金の磨きや、ディテールの卓越した職人技など、1884年から続くブルガリならではの技法は、今も作品に息づいています。
トゥボガスのつけ心地の良さに
惚れ込んで、もう1本購入
私が「モンテカルロ」を買ったのは、ちょうど世の中がイタリアンブームの頃。当時、イタリアンブランドのスーツを着て、イタメシを食べに行くのが、イケてる大人の証しのようなところがありました。
私自身も、撮影でたびたびイタリアを訪れ、人々の明るい気質、空の青さやトマトの赤さのような、温度とか色みたいなものまで含めて、この国が大好きに。「モンテカルロ」に恋をしたのも、情熱的なブルガリの世界観がスーツとハイヒールで精いっぱい仕事を頑張っていた私の心にすっとハマったからだと思います。
「モンテカルロ」のつけ心地があまりに良かったので、その3~4年後に、同じトゥボガスの技法を用いたステンレス製の時計を購入。冒頭でご紹介した写真の上の時計がそれです。今も、これに合う「ビー・ゼロワン」のリングと合わせてデイリーに楽しんでいます。