オーラを放つ時代の主役たち 第5回(最終回)いつまでも見つめていたい表情、ずっと聞いていたくなるその声。時代に愛される人の格別な魅力を篠山紀信さんの撮影する「写真」に切り取って。トップブランドの新作を颯爽と着こなし、いちだんと輝く6人のオーラを、素顔が垣間見えるインタビューとともにお届けします。
前回の記事はこちら>> 軽やかに跳躍し、ぴたりと着地を決める。まっすぐなまなざしがカメラを捉えます。
昨年は、2本の連続ドラマ『半分、青い。』と『義母と娘のブルース』に同時期出演。映画の公開も相次ぎました。あえてさまざまな役に挑みながら、疾走を続けた20代最後の年。「今の自分を残すことができたかなという満足感はあります」。
2019年は、新感覚の時代劇、といえる主演映画の公開で幕を開けました。「平成までの常識を取っ払って、新しい時代を切り拓きたい」
―冷静で、思慮深い言葉に、ふとのぞかせる強い意志。“次なる佐藤 健”にますます期待が募ります。
GUCCI
シャッター音が鳴った瞬間から、シルクのガウンを翻して動き続ける佐藤さん。次の役柄に向けて体を作るべくトレーニング中というだけあって、どんな動きもしなやかです。「普段はカジュアルなので、お仕事のときこういうブランドのものを着せていただくのは楽しいですね」。
ガウン30万円 スーツ56万円 シャツ7万3000円/すべてグッチ(グッチ ジャパン)演じるたび真摯に役と向き合い、作品ごとに新境地を拓いては着実にキャリアを重ねてきた、俳優・佐藤 健さん。ところが最新主演作では、これまで培った方法論や常識すら覆るような経験をしたと語ります。
幕末を舞台に日本初のマラソンといわれる「安政遠足(あんせいとおあし)」を描いた映画『サムライマラソン』。プロデューサー、ジェレミー・トーマスをはじめ海外の第一線で活躍するスタッフが集結した撮影現場は、まさに異例ずくめだったとか。
「海外で高い評価を築いてきたかたたちと仕事ができることに一番の魅力を感じて、この企画をやりたいなと思いました。でも、とにかく過去に経験してきたことが一切通用しない現場で。
監督は『台本は気にしなくていい。台詞も言いたいように言え』と。指示もなければリハーサルもなし、いきなり撮り始める。できるわけがないんだが、何とか成立させてやりたいという意地やプライドもあるし、初めてだから出てくる表現も絶対あると思ったので必死でしたね。
監督がずっと言っていた『新しい時代劇を撮りたい』という期待に100パーセント応えられたかどうかはわからないけれど、チャレンジングなエッセンスは端々に滲み出ていると思います」