ようこそ、ジュエリー美術館へ 第7回(全20回) 見る人、装う人に愛と夢を与え、胸を高鳴らせるジュエリー。今、時代が、世界が、ジュエリーの持つポジティブなパワーを求めています。輝き、色彩、めくるめくデザインを集めた美術館の扉が、ここに開きます。
前回の記事はこちら>> つけてよし、資産によし「価値ある最高峰のダイヤモンド」とは
極めて大粒で稀少性の高いダイヤモンドを目にすると、この世のものとは思えないほどの美しいオーラに誰もが感動を覚えることでしょう。ここでは、名だたるジュエラーから届いた珠玉の輝きをご覧いただきながら、ダイヤモンドの価値について山口 遼さんが解説します。
ダイヤモンドほどユニークで価値あるものはない
山口 遼(宝石史研究家)今、ダイヤモンドの世界は大きく混乱しています。質を問わなければ、ダイヤモンドの原石の産出は1億ctを超える一方で、この特集に集められたような大きくて質の高い原石の産出は激減。さらに人工のダイヤモンドが大量に登場するという、かつてない混迷の中にあります。その中で、価値のあるダイヤモンドとはと問われても、お答えするのが難しい、難問です。
価値があるという言葉には二つの意味が混同しています。使って楽しむ価値と、それを交換に出したときの価値とが一緒になって、どちらの価値をいうのかが曖昧なのです。今回は、ダイヤモンドを交換に出す、つまり売ろうとする場合には、どうした条件があれば売りやすいかを考えてみます。
最近では、日本でもオークションの市場ができてきまして、かなり小さなダイヤモンドでも条件が優れていれば売れるようですが、世界的なオークション市場、つまり、香港、ニューヨーク、ロンドン、ジュネーブといった市場で受け入れてくれるダイヤモンドとなれば、色々とご意見は分かれるでしょうが、大体、3ct以上、カラーはD、E、F以上、クラリティはVVS2以上というところでしょうか。
さらに大事なのは、海外の鑑別会社の書類が付属していることです。これは、日本の鑑別会社あるいは大百貨店などが麗々しく発行する保証書などではまったく通用しませんから、買うときにはご注意ください。
もう一つ肝心なのは、そのダイヤモンドを誰が売ったのかということです。言い換えれば、どの店のものか、どの宝石店の刻印が入っているのか、ということです。これは一種のブランド信仰ともいうべきもので、難しいことは置くとして、あの店のものなら大丈夫という、売買に際しての安心感を売買の当事者が持てるという便利さだと思えばいいでしょう。こうした信頼のおける宝石店は、世界中に10軒ほどあります。
ここでもう一つの価値、つまり使って楽しむ使用価値を思い出してください。10年も20年も、散々身につけて楽しんで、その後に資産として売却できる商品はダイヤモンド以外にあるでしょうか?
それこそがダイヤモンドの面白さであり、楽しさでもあるのです。どうか新しい目でダイヤモンドを見てください。これほどユニークで価値ある商品は、他にはないのです。
稀少性の高さ
BVLGARI4.5ct
オーバルカット ◆ ブルーダイヤモンド
リング「マニフィカ」(Pt×ブルーダイヤモンド4.5ct×ダイヤモンド)19憶7710万7000円(予定価格)/ブルガリ(ブルガリ ジャパン)ナチュラルファンシーヴィヴィッドブルーのオーバルカット。ブルーダイヤモンドで4.5ctという大きさは極めて稀少です。澄んだ青の類い稀なる美しさは、まさにつけてよし、資産によし。
極めて大粒
GRAFF25.85ct
エメラルドカット ◆ ダイヤモンド
リング「エメラルドカット ダイヤモンド リング」(Pt×ダイヤモンド・センター25.85ct)9億900万円/グラフ(グラフダイヤモンズジャパン)その突き抜けた大きさはもちろんのこと、Dカラーで不純物を一切含まない、完全なる無色透明。他とは一線を画す圧倒的な輝きで存在感を発揮する、グラフならではの最高峰の逸品といえます。
撮影/栗本 光
『家庭画報』2021年10月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。